HDMI機能。映像遅延の少ないモードへ自動切替しゲームの応答性を高める
現代のPC自作ユーザーやコンソールゲーマーにとって、「遅延(インプットラグ)」は勝利を左右する決定的な要因です。マウスをクリックしたり、コントローラーのボタンを押したりしてから、画面上のキャラクターが反応するまでの時間は、ミリ秒(ms)単位で競われています。この遅延を最小限に抑えるためのHDMI 2.1規格の重要機能が、ALLM (Auto Low Latency Mode) です。
簡単に言えば、ALLMとは「ゲーム機やPCがディスプレイに対し、『今からゲームを始めるので、余計な画像処理を省いた低遅延モード(ゲームモード)に切り替えてください』と自動的に信号を送る機能」のことです。
かつてのディスプレイやテレビでは、ユーザーが手動で設定メニューから「ゲームモード」を選択する必要がありました。しかし、ALLMが実装された環境では、この切り替えが完全に自動化されます。これにより、設定漏れによるラグの発生を防ぎ、常に最適なレスポンス性能でプレイすることが可能になります。
なぜ、ディスプレイには「低遅延モード」が必要なのでしょうか。それは、多くのテレビやモニターが標準状態で「画質向上処理」を行っているためです。
一般的なテレビは、映像を美しく見せるために以下のようなポストプロセスをリアルタイムで実行しています。
これらの処理は、ディスプレイ内部のプロセッサで計算を行うため、どうしても数ミリ秒から数十ミリ秒の時間を消費します。映画やドラマを視聴する分には問題になりませんが、FPS(ファーストパーソン・シューティング)などのジャンルでは、このわずかな遅延が「敵に先に撃たれる」という結果に直結します。
ALLMが有効な環境では、以下のようなフローで動作します。
ALLMは単体でも強力ですが、HDMI 2.1規格で導入された他の機能(VRRやAuto HDR)と組み合わせて使用することで、真価を発揮します。混同されやすいこれらの機能について整理します。
| 機能名 | 正式名称 | 主な目的 |
|---|
| 効果 |
|---|
| 動作タイミング |
|---|
| ALLM | Auto Low Latency Mode | 遅延の最小化 | インプットラグの削減 | モード切替時 |
| VRR | Variable Refresh Rate | 画面のティアリング防止 | カクつき(スタッタリング)の解消 | 描画フレームごと |
| Auto HDR | Auto HDR | 色域・輝度の最適化 | 標準的な映像をHDR相当に変換 | コンテンツ起動時 |
例えば、NVIDIA GeForce RTX 4090 を搭載したPCで、LG OLED C3 のような最新の有機ELテレビに接続してゲームを起動した場合、以下のような連鎖が起こります。
このように、ALLMは「土台となるレスポンス性能」を確保するためのスイッチのような役割を果たしています。
ALLMを利用するためには、送信側(PC/コンソール)と受信側(ディスプレイ/テレビ)の両方がHDMI 2.1規格に準拠し、ALLMに対応している必要があります。
ALLMを有効に活用し、最高のゲーミング環境を構築するためには、以下のスペック指標に注目してください。
ALLMを含むHDMI 2.1のエコシステムは、2025年、そして2026年に向けてさらに深化していくと予想されます。
2025年以降のディスプレイでは、単なる「オン/オフ」の切り替えではなく、AIがコンテンツの内容をリアルタイムで解析し、遅延を最適化する機能が普及し始めています。例えば、メニュー画面では画質優先(ALLMオフに近い状態)にし、ゲームプレイ画面に入った瞬間にミリ秒単位で低遅延モードへ移行させる、よりシームレスな制御が実装されつつあります。
2026年に向けては、HDMI 2.1aや2.1bといったマイナーアップデートに加え、より高リフレッシュレート(4K/240Hz以上)への完全対応が標準化される見込みです。
ALLMに対応した製品を揃えても、正しく動作しない場合があります。以下のチェックリストを確認してください。
Q1: ALLMを有効にすると、画質が劣化しますか? A1: はい、厳密には劣化します。ALLMが有効な「ゲームモード」では、ノイズリダクションやフレーム補完などの「美装処理」を停止するため、映画のような滑らかさや、極端にクリーンな映像は失われます。しかし、これは「不自然な処理」を省いているだけであり、本来のソースに近い映像が出力されるため、ゲーマーにとっては正解といえます。
Q2: PCモニターでもALLMは意味がありますか? A2: ゲーミングモニターの多くは、最初から「低遅延設定」で動作しているため、テレビほど劇的な効果は感じられないかもしれません。しかし、最近の大型ディスプレイや、テレビとモニターの中間的な製品(スマートモニターなど)では、ALLMによる自動切り替えは非常に便利です。
Q3: ALLMとVRRは同時に使えますか? A3: はい、同時に利用可能です。むしろ、HDMI 2.1対応機器(PS5やRTX 40シリーズなど)を使用している場合は、両方を同時に有効にすることが推奨されます。ALLMで「経路」を最短にし、VRRで「タイミング」を合わせることで、最高のプレイ環境が構築されます。