米 Datapoint 社が 1977 年公開した世界初の商用 LAN 技術。トークンパッシング方式で 2.5Mbps、1980 年代に IBM Token Ring / Ethernet 競合のうち Ethernet に敗北、組込 / 工業 / 制御用途で 2000 年代まで残存した古典 LAN。
ARCNET(アークネット、Attached Resource Computer NETwork)は、米テキサス州 Datapoint Corporation が 1977 年に開発・公開した世界初の商用 LAN(Local Area Network)技術です。Datapoint はミニコン / 端末メーカーとして 1968 年に創業した会社で、ARCNET は同社の Datapoint 2200(1970 年発表のスタンドアロンプロセッサ)を相互接続するための社内開発技術として始まり、後に他社にもライセンス供与されました。
歴史的には、Robert Metcalfe らが Xerox PARC で開発した Ethernet(1973 年に原型開発、1980 年に DEC / Intel / Xerox の DIX で商用化)よりも商用化が早く、世界で最初に企業 LAN として使われた歴史的に重要なネットワーク規格です。トークンパッシング方式(論理リング + 物理スター / バス)を採用し、ネットワーク内を「トークン」と呼ばれる送信権が順番に巡回することでデータ衝突を回避、当時としては高速な 2.5Mbps の通信速度を実現しました。
物理層は当時の同軸ケーブル RG-62 75Ω(主流)・10BASE2 同軸 / ツイストペア / 光ファイバなど多様な選択肢があり、ハブとしては Active Hub(再生中継器)・Passive Hub(分配器のみ)が用意されました。最大ノード数 255、伝送距離は同軸で最大 600m と当時の他 LAN より広範囲をカバーできました。
1980 年代に IBM Token Ring(IEEE 802.5、1985 / 4-16Mbps)・Ethernet(IEEE 802.3、1983 / 10Mbps)との 3 つ巴の LAN 規格戦争が始まりました。ARCNET は規格策定が独自(IEEE 標準化なし、ANSI 標準は ATA/ANSI 878.1 として 1992 に遅れて成立)・速度が遅い(2.5Mbps vs Ethernet 10Mbps)・コストが特にメリットなしという問題で、Ethernet が低価格 + 高速 + IEEE 標準化で勝利、ARCNET は 1990 年代後半までに事務系 LAN 市場から完全撤退しました。
しかし、ARCNET は組込 / 工業 / 制御 / ビルディングオートメーション(BACnet 規格採用)・自動車 / 鉄道制御 / 産業用 PLC 用途では 2000 年代まで残存しました。決定論的応答性(トークン時間で遅延を保証)・ノイズ耐性(同軸ベースで電磁ノイズ強)が産業用途で評価され、現代でも一部の組込システムで稼働中です。
| 規格 | 公開年 | 速度 | 方式 | 結末 |
|---|---|---|---|---|
| ARCNET | 1977 | 2.5Mbps | Token Passing | 1990s 後半事務撤退・組込残存 |
| Ethernet 10BASE5 | 1980 | 10Mbps | CSMA/CD | 主流確立 |
| IBM Token Ring | 1985 | 4-16Mbps | Token Passing | 2010s 撤退 |
| FDDI | 1986 | 100Mbps | Token Passing | 2000s 衰退 |
| Fast Ethernet | 1995 | 100Mbps | CSMA/CD | 主流継続 |
ARCNET 機材は現在新規購入できませんが、レトロ自作 PC ビルダー(1980 年代後半-1990 年代前半 PC LAN 環境再現)で重要なコレクション対象です。中古市場では ARCNET ISA カード(SMC ArcCard 等)が ¥3,000-10,000、ARCNET ハブが ¥10,000-30,000 で稀に流通中です。
注意点として、ARCNET ドライバは Windows 9x / NT 4.0 / Linux の 1990 年代版にしか含まれていないため、Windows 7 以降では非対応です。レトロ Win95 / 98 環境構築用として動作させるのが現実的で、現代のメイン LAN として使うのは不可能です。組込・工業用 ARCNET は 2024 年現在も SOHO 産業用機器で稼働しており、これらの保守 / 統合を行う技術者ニーズが残存しています。
Q1: なぜ ARCNET が世界初の LAN とされるのですか? A: Datapoint が 1977 年に商用 LAN として実装・販売したためです。Ethernet は 1973 年に Xerox PARC で原型が開発されたものの、商用化は 1980 年(DIX Ethernet)まで遅れたため、商用展開時期で ARCNET が最も早かったとされます。
Q2: ARCNET と Ethernet どちらが優れていましたか? A: 1970 年代後半は ARCNET が優位(商用化先行・トークンで衝突回避)でしたが、1980 年代に Ethernet が低価格 + 10Mbps 高速 + IEEE 標準化で逆転、その後は Ethernet 圧勝が続きました。技術的には用途次第ですが、コスト + 普及度で Ethernet が勝利しました。
Q3: 現代でも ARCNET が使われている分野はありますか? A: ビルディングオートメーション(BACnet 規格物理層)・産業用 PLC・自動車 / 鉄道制御の一部で 2024 年現在も残存しています。決定論的応答性とノイズ耐性が産業用途で評価され続けています。