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上級

Cray-1(クレイワン)

米 Cray Research 社が 1976 年に発表した世界初のベクトル型スーパーコンピュータ。当時最速 80MFLOPS・8.8MB 主記憶・冷却用フロン液冷の独特な円筒形デザインで知られる、HPC 黎明期の象徴的システム。

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2026/5/9 更新
関連タグ
HPC
Supercomputer
Cray
Vector
1976
Seymour Cray

概要

Cray-1(クレイ ワン)は、米 Cray Research 社が 1976 年に発表した世界初のベクトル型スーパーコンピュータです。創業者 Seymour Cray(1925-1996)は、CDC(Control Data Corporation)で CDC 6600(1964 年世界最速、世界初の 1MFLOPS 達成機)を開発した伝説的エンジニアで、CDC を独立後 1972 年に Cray Research を設立し、この Cray-1 で再び世界最速の称号を獲得しました。

Cray-1 の最大の特徴はベクトル演算機構の採用です。スカラ機が 1 命令で 1 データ処理するのに対し、ベクトル機は 1 命令で複数データ(64 要素のベクトル)を一括処理する SIMD 風の機構で、当時最速 80MFLOPS(160MFLOPS ピーク)を達成、スカラ機の 10 倍以上の性能を発揮しました。8.8MB(64-bit ワード換算で 100 万ワード)の高速主記憶、冷却用フロン液冷、独特な円筒形(C 字型)デザイン(配線距離を最短化するため)・椅子型ベンチ(冷却装置内蔵)の独創的設計で、80 台超が全世界で出荷されました。

価格は 1 台 $5-9 million(当時のレートで約 15-25 億円)で、Los Alamos National Laboratory(米国防総省核兵器研究)・NCAR(米国大気研究センター)・ECMWF(欧州中期気象予報センター)・米国防総省・大学研究機関などで採用され、HPC 黎明期の象徴的システムとして 1976-1980 年代のスーパーコンピュータ市場を支配しました。後継機 Cray X-MP / Y-MP / C90 / T90 と進化を続け、Cray Research は 1996 年に SGI 買収、2000 年 Tera Computer に売却され Cray Inc. として再独立、2019 年に HPE が買収して現在はHPE Cray ブランドで継続中です。

主な特徴・仕組み

  • アーキテクチャ: 64-bit ベクトル演算 + スカラ演算、4 並列ベクトル機能ユニット。
  • ベクトル長: 64 要素(64-bit 整数 / 浮動小数点)。
  • ピーク性能: 160MFLOPS、実効 80MFLOPS。
  • 主記憶: 8.8MB(64-bit ワード換算で 100 万ワード、当時最大級)。
  • ECC メモリ: SECDED(Single Error Correction, Double Error Detection)。
  • クロック: 80MHz(12.5ns サイクル、当時極めて高速)。
  • 冷却: フロンガス液冷(後年代替フロンへ)。
  • サイズ: 円筒形(C 字型)、直径 約 2m × 高さ 1.95m × 重量 5.5 トン。
  • 消費電力: 約 115kW。
  • OS: COS(Cray Operating System)、後に UNICOS。
  • 価格: $5-9 million(1976 年時価)。
  • 出荷台数: 80 台超(1976-1981)。

Cray シリーズ系譜

機種公開年ピーク性能プロセッサ数
Cray-11976160MFLOPS1
Cray X-MP1982800MFLOPS4
Cray-219851.9GFLOPS4
Cray Y-MP19882.5GFLOPS8
Cray T3D1993100GFLOPS1024 (DEC Alpha)
Cray T3E19951.2TFLOPS2048 (DEC Alpha)

自作PCユーザー向けの注意点

Cray-1 は当然新規購入できませんが、Computer History Museum(米国カリフォルニア)や Living Computer Museum(シアトル、現在閉館)で実機を見学可能でした。原寸大レプリカが Cray Inc. 本社や IT 系博物館に展示されています。

現代では、Cray-1 を Verilog / VHDL 実装した FPGA レプリカ(Chris Fenton の Cray-1A on FPGA、2010)が著名で、低クロックで Cray-1 のベクトル演算が動作する状態を再現しています。当時の COS / UNICOS をエミュレータで動かすコレクター活動も活発です。

関連用語との違い

  • CDC 6600(1964): Seymour Cray の前作、世界初の 1MFLOPS 達成機。
  • Cray X-MP / Y-MP / C90: Cray-1 の後継系列、マルチプロセッサ化進展。
  • 地球シミュレータ(2002): NEC SX-6 ベクトル機の日本最高峰、Cray のベクトル思想を継承。
  • 富岳(2020): 現代の最高性能スパコン、ARM SVE スカラ + ベクトル統合型。

よくある質問(FAQ)

Q1: Cray-1 の性能はスマホと比べてどうですか? A: 80MFLOPS は現代のスマートフォン CPU(数 GFLOPS-数 TFLOPS)よりはるかに低性能ですが、1976 年当時は世界最速の汎用コンピュータでした。

Q2: なぜ円筒形(C 字型)なのですか? A: 内部の配線距離を最短化して信号伝達遅延を減らすためです。光速は 30cm/ns で、80MHz クロックでは配線長も性能を直接左右しました。

Q3: ベクトル機の思想は今も生きていますか? A: はい。現代の SIMD(SSE / AVX / NEON / SVE)・GPU CUDA / Tensor Core はすべてベクトル演算の発展系で、Cray-1 の思想は HPC / AI の中核として現代も生き続けています。

まとめ

  • Cray Research 1976 年発表、世界初のベクトル型スパコン
  • 80MFLOPS ピーク性能・8.8MB 主記憶・80 台超出荷
  • 円筒形(C 字型)デザイン・フロン液冷の独創的システム
  • HPC 黎明期を象徴する歴史的マシン、ベクトル思想は現代も継承
この記事について
カテゴリーCPU
難易度上級
作成日2026/5/9