米 Digital Equipment Corporation が 1992 年に発表した 64-bit RISC プロセッサ系統。当時最高クロック・最高性能を誇り Windows NT / Linux / Tru64 UNIX で採用、1998 年 Compaq 吸収後 2004 年生産終了したワークステーション伝説。
DEC Alpha(ディーイーシー アルファ、別称 Alpha AXP)は、米 Digital Equipment Corporation(DEC)が 1992 年に発表した 64-bit RISC プロセッサ系統です。DEC は 1957 年創業で VAX / PDP-11 によって 1970-80 年代のミニコンピュータ市場を支配した名門コンピュータメーカーで、Alpha は同社の RISC 化戦略の中心として開発されました。
初代 Alpha 21064(コードネーム EV4)が 200MHz でデビューした 1992 年当時、Intel 486DX2 が 50-66MHz、SPARC が 60-110MHz、MIPS が 100MHz クラスだった中、Alpha は圧倒的な性能で衝撃を与えました。「世界最速プロセッサ」のキャッチコピー通り、ハイエンドサーバ・ワークステーション・スーパーコンピュータ市場で旋風を巻き起こし、Cray T3D / T3E のスーパーコンピュータにも採用されました。
1998 年に DEC が Compaq に買収され Alpha 部門も移管、2001 年に Compaq が Itanium へ移行する戦略を発表したため Alpha の開発リソースは縮小、2002 年 Compaq が HP に買収され、2004 年最終世代 EV79 を最後に生産終了しました。短い 12 年間でしたが、Tru64 UNIX / OpenVMS / Windows NT 4.0 / Digital UNIX / Linux 等で採用された伝説的な 64-bit RISC プロセッサとして記憶されています。
| プロセッサ | 公開年 | 最大クロック | OS | 結末 |
|---|---|---|---|---|
| DEC Alpha 21264 | 1998 | 833MHz | Tru64 / OpenVMS / NT | 2004 終了 |
| Sun UltraSPARC II | 1997 | 480MHz | Solaris | Oracle 継続 |
| MIPS R10000 | 1996 | 250MHz | IRIX / Linux | 2014 終了 |
| IBM POWER3 | 1998 | 450MHz | AIX / Linux | 継続中 |
| HP PA-RISC PA-8500 | 1997 | 440MHz | HP-UX | 2008 終了 |
Alpha は当初コンシューマ向け CPU ではなくエンタープライズワークステーション専用でしたが、1990 年代後半に DEC が AlphaPC ボード(Multia / UDB / DS10L)を販売、Linux / Windows NT 4.0 で動かす個人ユーザーも一部存在しました。中古市場では今でも AlphaStation 200 / 500 / DS10L が ¥30,000-100,000 で稀に出現、コレクター需要があります。
技術史として「64-bit RISC の最強候補が Itanium / x86-64 に駆逐された経緯」を知る貴重な事例で、企業買収による開発中断のリスクを示す典型例として教訓的です。
Q1: Alpha は今動かせますか? A: AlphaServer の中古機を購入し、Tru64 UNIX / OpenVMS / Linux を動作可能ですが、開発エコシステムは事実上凍結しています。エミュレータ(Hercules / SimAlpha)で簡易実行も可能です。
Q2: なぜ Alpha は終わったのですか? A: DEC の Compaq 買収 → Itanium 戦略への切替で開発リソースを失ったことが直接の原因です。技術的には優れていたものの、企業買収による政治的判断で消滅しました。
Q3: Alpha のアーキテクチャ的な遺産はありますか? A: Out-of-Order 実行 / 深いパイプライン設計の手法は現代 CPU に継承されており、ARM64 の設計者も Alpha からの影響を公言しています。