FDDI(エフディーディーアイ)
ANSI X3T9.5 が 1986 年策定した Fiber Distributed Data Interface 100Mbps 光ファイバ LAN 規格。リング 2 重冗長構成で耐障害性高く 1990 年代企業バックボーンに採用、Gigabit Ethernet 台頭で衰退。
概要
FDDI(エフディーディーアイ、Fiber Distributed Data Interface)は、米 ANSI X3T9.5 委員会が 1986 年に策定した 100Mbps 光ファイバ LAN 規格です。当時主流の 10Mbps Ethernet(IEEE 802.3、1980)・4-16Mbps Token Ring(IEEE 802.5、1985)を桁違いに上回る通信速度を、トークンパッシング方式 + 二重リング冗長 + 光ファイバ物理層採用で実現しました。
物理層は ANSI X3T9.5(1986)・ISO/IEC 9314(1989-1995)として標準化され、最大伝送距離 100km(マルチモード光ファイバの段階接続)・ノード数最大 500 と当時としては圧倒的なスケーラビリティを誇りました。論理的には 2 つの逆方向トークンパッシングリング(プライマリリング + セカンダリリング)で構成され、片方のリングに障害が発生しても自動的に他方が引き継ぐ「自動回復」機能を提供しました。
主な採用市場は 1990 年代の企業 LAN バックボーン・メインフレーム接続・大学 / 政府機関の基幹ネットワークで、IBM / DEC / HP / 富士通 / NEC 等の主要ベンダーが対応機器を出荷しました。米国の大企業データセンタや大学キャンパスバックボーン・公共機関の主要ネットワークで FDDI が標準的に採用され、当時の「最先端 LAN 規格」として高い権威を持っていました。
しかし、1990 年代後半に Fast Ethernet(IEEE 802.3u、1995、100Mbps、銅線、低価格)・Gigabit Ethernet(IEEE 802.3z、1998、1Gbps、銅線 / 光ファイバ)が登場し、FDDI の優位性が崩れました。Gigabit Ethernet の機材価格は FDDI の 1/3-1/5 でありながら 10 倍以上の速度を提供したため、企業ネットワークは急速に Gigabit Ethernet バックボーンへ移行、FDDI は 2000 年代までに企業 LAN 市場から事実上消滅しました。
派生規格として Copper Distributed Data Interface(CDDI、銅線版)・FDDI II(時分割多重で音声 / 動画もサポート)・FDDI Follow-On LAN(FFOL、Gigabit クラス)も提案されましたが、いずれも市場を獲得できず消滅しました。
主な特徴・仕組み
- 規格化: ANSI X3T9.5(1986)、ISO/IEC 9314(1989-1995)。
- 速度: 100Mbps、二重リングで合計 200Mbps の冗長帯域。
- 物理層: マルチモード光ファイバ(Class A / B)、最大 100km。
- アクセス方式: トークンパッシング(Timed-Token Rotation Protocol)。
- ノード数: 最大 500 個。
- 冗長: プライマリ + セカンダリ 2 重リング、自動回復。
- 接続: SAS(Single-Attached Station、片リング)/ DAS(Dual-Attached Station、両リング)/ コンセントレータ経由。
- 主要ベンダー: IBM / DEC / HP / SGI / 富士通 / NEC / Cisco / 3Com。
- 採用市場: 1990 年代企業 LAN バックボーン / 大学キャンパス / 政府機関。
- 衰退: 1990 年代後半の Gigabit Ethernet 台頭で 2000 年代に消滅。
- 派生: CDDI(銅線版)/ FDDI II / FFOL(いずれも普及せず)。
主要 LAN 規格 比較(1995 年時点)
| 規格 | 速度 | 物理層 | アクセス方式 | 採用 |
|---|---|---|---|---|
| FDDI | 100Mbps | 光ファイバ | トークンパッシング | 企業 BB |
| Ethernet 10BASE5 / T | 10Mbps | 同軸 / 銅 | CSMA/CD | 一般 LAN |
| Token Ring | 4-16Mbps | STP / 光 | トークンパッシング | IBM / 業務 |
| ARCNET | 2.5Mbps | 同軸 / 銅 | トークンパッシング | 古典 |
| ATM 155Mbps | 155Mbps | 光 / 銅 | セル交換 | WAN / LAN |
自作PCユーザー向けの注意点
FDDI は現在新規購入できませんが、レトロ企業 LAN マニアにとってはコレクション対象です。中古市場では DEC / Cisco / 3Com 製 FDDI コンセントレータ・カードが ¥10,000-50,000 で稀に流通中、コレクター需要があります。
注意点として、FDDI ドライバは Windows NT 4.0 / Solaris / IRIX / AIX / Linux の 1990 年代版にしか含まれておらず、現代 Windows / Linux では非対応です。動作させるには古いハードウェア + 当時の OS が必須で、レトロ業務 LAN 環境再現以外の用途では使えません。
関連用語との違い
- Token Ring: 同じトークンパッシング、4-16Mbps で銅線、用途が異なる。
- Gigabit Ethernet(1998): FDDI の事実上の後継、1Gbps + 低価格で勝利。
- ATM(1990s): セル交換型 WAN/LAN、QoS 保証で別アプローチ。
- 10G Ethernet(2002): 現代主流のバックボーン規格。
よくある質問(FAQ)
Q1: なぜ FDDI は普及したのに衰退したのですか? A: 当初は 10Mbps Ethernet を 10 倍上回る速度で圧倒的優位でしたが、1995 年 Fast Ethernet(100Mbps、銅線、低価格)・1998 年 Gigabit Ethernet(1Gbps)の登場で価格 / 速度両面で逆転されました。FDDI 機材価格は Ethernet の 3-5 倍だったため、コスト優位性で押されました。
Q2: 二重リング構造の利点は? A: 片方のリングが切断されても自動的に他方が引き継ぎ、ネットワーク全体のダウンタイムをミリ秒単位に抑える設計でした。当時の Ethernet にはこの自動回復機能がなく、信頼性面で FDDI の大きな利点となっていました。
Q3: 現代で FDDI が使われている分野はありますか? A: 事実上ありません。2000 年代後半までに企業 LAN / バックボーン市場から消滅しました。レガシー業務システムの保守・コンピュータ史マニアのコレクションでのみ目にすることがあります。
まとめ
- ANSI 1986 年策定 100Mbps 光ファイバ LAN 規格
- 二重リング冗長 + トークンパッシング、最大 100km
- 1990 年代企業 LAN バックボーンの主流
- Gigabit Ethernet 台頭で 2000 年代に消滅