アマチュア無線の電波を効率的に送受信するための空中線設備。八木アンテナ・ダイポールアンテナ・垂直アンテナなど多数の形式があり、周波数帯と運用目的に応じて選択する。
アンテナは無線通信システムにおいて電波の送信と受信を担う最も重要な要素である。トランシーバーの性能がいくら優れていても、アンテナの性能が不十分であれば通信距離は著しく制限される。「アンテナは最良のアンプである」という格言が示す通り、アンテナの改善は出力増強よりも効果的な場合が多い。
アマチュア無線では運用周波数帯が HF(3.5MHz)から SHF(10GHz 以上)まで幅広く、それぞれの波長に適したアンテナ設計が必要となる。例えば 7MHz(40m バンド)の半波長ダイポールアンテナは全長約20m にもなるが、430MHz(70cm バンド)では約35cm で済む。
| 形式 | 構造 | 利得 | 指向性 | 適用帯域 | 設置難易度 |
|---|---|---|---|---|---|
| ダイポール | 水平に張った半波長ワイヤー | 2.15 dBi | 8の字 | HF 全般 | 容易 |
| 八木・宇田 | 導波器+放射器+反射器 | 6〜15 dBi | 鋭い単一方向 | VHF/UHF, HF 上位 | 要回転機構 |
| 垂直(GP) | 1/4波長の垂直エレメント+ラジアル | 2〜5 dBi | 水平面無指向性 | HF/VHF/UHF | 中程度 |
| ループ | 1波長の導体をループ状に | 3〜4 dBi | 双方向 | HF | 中程度 |
| マグネチックループ | 小型ループ+バリコン同調 | -2〜0 dBi | 双方向 | HF | 容易(室内可) |
| ディスコーン | 円錐と円盤の組み合わせ | 0〜2 dBi | 水平面無指向性 | 広帯域受信 | 容易 |
八木・宇田アンテナ(通称八木アンテナ)は日本人の八木秀次と宇田新太郎が1926年に発明した指向性アンテナで、テレビ受信用としても世界中で広く使われている。アマチュア無線においては VHF/UHF 帯や HF 上位バンドで高利得の通信を実現する主力アンテナである。
基本構成は3つの要素からなる。
導波器の本数を増やすほど利得と指向性が向上するが、アンテナの物理サイズも大きくなる。HF 帯(14/21/28MHz)では3〜5エレメントの八木をクランクアップタワーに設置するのが DX 通信の定番構成である。
| 周波数帯 | 推奨アンテナ | 設置場所 | 予算 |
|---|---|---|---|
| 3.5/7 MHz | ワイヤーダイポール、逆V ダイポール | 庭・屋上(全長20〜40m 必要) | 5,000〜2万円 |
| 14/21/28 MHz | 3バンド八木(トライバンダー) | タワー+ローテーター | 15〜50万円 |
| 50 MHz | 5〜6エレ八木 | 屋上マスト | 2〜5万円 |
| 144 MHz | GP または 10エレ八木 | 屋上マスト | 1〜3万円 |
| 430 MHz | GP または 15エレ八木 | 屋上マスト | 1〜3万円 |
| マンション制約あり | マグネチックループ、ベランダホイップ |
アンテナ性能を評価する主要パラメータを理解しておくことが重要である。
VSWR が高い(2.0 以上)状態で送信すると、反射電力がトランシーバーの終段回路を損傷する恐れがある。SWR 計またはアンテナアナライザーで調整してから運用すること。
ある。代表的なものは以下の通り。マグネチックループアンテナは室内設置でも HF 帯で運用でき、利得は低いものの FT8 などの弱信号デジタルモードと組み合わせれば実用的な DX 通信が可能。ベランダ手すりに取り付けるモービルホイップ(第一電波工業 HF40FXW 等)も定番。ただし管理規約の確認と、落下防止措置は必須である。
可能である。最も簡単なのはワイヤーダイポールアンテナで、必要な材料はビニール被覆銅線(数百円/m)、バラン(2,000〜5,000円)、同軸ケーブル(数百円/m)のみ。7MHz 帯であれば全長約20m のワイヤーを逆 V 字型に張るだけで実用的なアンテナが完成する。設計計算は「波長(m) = 300 / 周波数(MHz)」で、半波長ダイポールなら「全長 = 150 / 周波数」が基本式となる。
高さ10m 以下で建築基準法上の「工作物」に該当しない場合は原則不要だが、自治体の条例によっては届出が必要な場合がある。10m を超える場合は建築確認申請が必要。また風圧荷重や地震に対する構造計算が必要で、専門業者による施工が推奨される。近隣への景観配慮や、万が一の倒壊リスクに備えた賠償責任保険(JARL 会員向けの「アマチュア無線賠償責任保険」等)への加入も検討すべきである。
| ベランダ・室内 |
| 1〜5万円 |