マスク言語モデル事前学習(マスクゲンゴモデルジゼンガクシュウ)
BERT等が採用する双方向事前学習手法。入力トークンの一部(通常15%)をランダムにマスクし、文脈全体(左右両方向)から元のトークンを予測させることで双方向の文脈表現を獲得する。
マスク言語モデル事前学習(MLM)とは
Masked Language Modeling(MLM)は、Googleが2018年に発表したBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)で採用された自己教師あり事前学習手法。入力テキストの一部トークンを[MASK]トークンで置換し、文の左右両方向の文脈を参照して元のトークンを予測するタスクを学習することで、双方向の文脈表現を獲得する。
MLMの学習プロセス
マスキング戦略(BERT論文準拠)
BERT原論文では全トークンの15%を選択し、以下の割合で処理:
選択された15%のトークンのうち:
- 80%: [MASK]トークンに置換
- 10%: ランダムな別トークンに置換
- 10%: 元のトークンのまま維持
80%のみMASKにしない理由は、Fine-tuning時に[MASK]トークンが存在しない分布ミスマッチを軽減するため。
BERTとNext Sentence Prediction(NSP)
BERTはMLMに加えてNext Sentence Prediction(NSP)タスクも採用。2文を[SEP]で繋ぎ、2文目が実際に後続する文か(IsNext/NotNext)を予測するバイナリ分類タスク。
ただしRoBERTa(2019年)の実験でNSPはMLMの性能を下げる場合があることが示され、後続モデルの多くはMLMのみを使用。
MLMモデルの系譜
- BERT (2018): MLM + NSP、12層Transformer
- RoBERTa (2019): NSP廃止、ダイナミックマスキング、大規模データ
- ALBERT (2019): パラメータ共有、SOP(文順序予測)
- DeBERTa (2020): 分離Attention、絶対位置エンコーディング改良
- BERT-large-ja (2020+): 日本語特化BERT(東北大等)
- Luke (2020): エンティティ認識特化
CLM(因果言語モデル)との住み分け
2020年代以降、GPT系のCLMモデルがスケールアップにより理解タスクでも優位になり、MLMの相対的地位は低下。しかし以下用途ではMLMが依然有効:
MLMが有利な用途:
- テキスト分類(感情分析・カテゴリ分類)
- 固有表現認識(NER)
- 質問応答(MRC)
- エンベディング生成(意味検索)
CLMが有利な用途:
- テキスト生成全般
- チャットボット・対話システム
- コード生成
- 少数ショット学習(few-shot prompting)
日本語LLMとMLM
jisaku.comで活用しているMeilisearch + ベクトル検索の基盤には、日本語テキストの意味理解が必要。BERTベースの日本語エンベディングモデル(cl-tohoku/bert-base-japanese-v3等)はMLM事前学習済モデルをFine-tuningしたものが多く、用語集の意味検索にも間接的に活用されている。