概要
MOSFETフェーズとは、CPUやGPUなどの高負荷コンポーネントに電力を供給するために設計されたVRM(Voltage Regulator Module)内部で構成される「スイッチング段」のことです。一般的にはNチャネルMOSFETとPチャネルMOSFETがペアになり、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によって高速にオン・オフを繰り返すことで、入力電圧(通常は12 Vや5 V)から安定した出力電圧(1.2 V〜1.4 V程度)へ変換します。
MOSFETフェーズが多いほど、1つのフェーズにかかる負荷を分散でき、発熱・ノイズ低減とともに応答性も向上します。
| 項目 | 典型的な値 | 詳細説明 | |------|------------|----------| | パッケージ | BGA (Ball Grid Array) / QFN (Quad Flat No-lead) | 高電流・高温に耐える構造。BGAはヒートシンク貼付が容易。 | | RDS(on) | 5 mΩ〜30 mΩ(12V入力時) | スイッチング時のオン抵抗。低いほど発熱が少ない。 | | スイッチング周波数 | 100 kHz〜500 kHz | PWM制御での切替頻度。高いとノイズ・効率向上、低いとインダクタ容量増大。 | | 最大電流 | 20 A〜40 A(単一フェーズ) | MOSFETが耐えられる連続電流。実際はパッケージ熱設計で決定。 | | 入力電圧範囲 | 12 V ±5 % | PCのPSUから供給される主電源ライン。 | | 出力電圧範囲 | 1.2 V〜1.4 V(CPU用) | CPUやGPUに必要な低電圧。 |
| 規格 | 対象 | 説明 | |------|------|------| | UL 60950-1 / IEC 62368 | 電源モジュール安全性 | 過電流・過熱保護の要件。 | | RoHS | 有害物質制限 | 鉛、ヒ素などを含まない設計。 | | TÜV | 電磁両立性(EMC) | 低ノイズ設計が求められる。 |
| 項目 | 内容 | |------|------| | 価格帯 | ¥5,000〜¥10,000(日本円) | | 性能特性 | 4フェーズ・RDS(on) 15 mΩ、スイッチング周波数200 kHz | | 対象ユーザー | 初心者向け、予算重視のゲーマーやオフィスPC | | 代表製品 | ASUS PRIME Z590‑M(4フェーズVRM)¥8,000 | | メリット・デメリット | メリット:価格が安く設置も簡単。デメリット:高負荷時に発熱が増える可能性あり。 |
| 項目 | 内容 | |------|------| | 価格帯 | ¥10,000〜¥20,000 | | 性能特性 | 6〜8フェーズ・RDS(on) 10 mΩ、スイッチング周波数300 kHz | | 対象ユーザー | 中級者向け、少しのオーバークロックや高負荷作業を行うクリエイター | | 代表製品 | MSI MPG B550 GAMING PLUS(8フェーズVRM)¥12,000 | | メリット・デメリット | メリット:発熱が抑えられ、安定性向上。デメリット:価格がやや高めで設置スペースを取る。 |
| 項目 | 内容 | |------|------| | 価格帯 | ¥20,000〜¥50,000 | | 性能特性 | 12フェーズ以上・RDS(on) 5 mΩ、スイッチング周波数400 kHz+GaN MOSFETオプション | | 対象ユーザー | ハイエンドゲーマー、ハイパフォーマンスクリエイター、ハードウェアリサーチャー | | 代表製品 | ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO(12フェーズVRM)¥35,000 | | メリット・デメリット | メリット:高TDPCPUやオーバークロックでも安定。デメリット:コストが高く、設置スペースと冷却負荷も増大。 |
| チェック項目 | 内容 | |--------------|------| | 価格比較サイト活用法 | Amazon、価格.com、PCPartPickerで価格・レビューを比較。 | | 保証・サポート確認事項 | 3年保証以上があるか、メーカーのアフターサービスはどうか。 | | 互換性チェック方法 | CPUソケットとマザーボードのVRM仕様表を確認し、TDPに合致しているか。 | | 将来のアップグレード性 | 追加拡張カードやCPUオーバークロック時に余裕があるか。 |
| # | 問題 | 原因 | 解決法 | 予防策 | |---|------|------|--------|--------| | 1 | CPUが頻繁にクラッシュ | VRMのフェーズ数不足・発熱過多 | 冷却強化、VRMヒートシンク交換、オーバークロック設定を下げる | 定期的な温度監視、ファン速度調整 | | 2 | 電圧ドロップが大きい | MOSFETのRDS(on)が高い、インダクタ容量不足 | 高性能MOSFETに交換、インダクタを増設 | 事前にCPU TDPに合ったVRM設計 | | 3 | ノイズ音が発生 | スイッチング周波数が低い、PCBレイアウト不良 | 周波数を上げる、配線を整理 | PCB設計時のEMI対策 | | 4 | PSUが過熱して停止 | VRM消費電力が高くPSU容量不足 | PSUアップグレード、VRM効率改善 | PSU容量はCPU + GPU + 周辺機器合算で余裕を持つ | | 5 | BIOSが認識しない | VRD設定とCPU互換性の問題 | BIOS更新、VRDオフにする | CPU仕様書でVRD対応確認 |
| モデル | フェーズ数 | RDS(on) | スイッチング周波数 | 価格 | |--------|------------|---------|---------------------|------| | ASUS ROG MAXIMUS Z790 HERO | 12 | 4 mΩ(GaN) | 400 kHz | ¥35,000 | | MSI MEG X299 GODLIKE | 14 | 5 mΩ | 350 kHz | ¥30,000 | | GIGABYTE AORUS Z690 MASTER | 10 | 6 mΩ | 300 kHz | ¥25,000 |
MOSFETフェーズはPC自作におけるVRM設計の核となる要素です。フェーズ数・RDS(on)・スイッチング周波数といった技術仕様が、電源安定性、熱管理、長寿命化に直結します。エントリーレベルからハイエンドまで幅広い選択肢が存在し、用途や予算に応じて最適な構成を決めることが重要です。最新のGaN/SiC技術とAI制御を取り入れたモデルは、将来性も高く、長期的な投資価値があります。自作PCで最高のパフォーマンスと安定性を追求するなら、MOSFETフェーズの理解と適切な選択が不可欠です。