Magnetoresistive RAM、磁気トンネル接合(MTJ)で電子スピン方向を記録する NVRAM。Toggle MRAM / STT-MRAM / SOT-MRAM 世代があり、Everspin / Avalanche 等が商用化、組込 / 車載分野で採用。
MRAM(エムラム、Magnetoresistive Random Access Memory、磁気抵抗 RAM)は、磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction、MTJ)構造内の電子スピン方向(磁化方向)を記録単位として利用する NVRAM(不揮発性 RAM)技術です。MTJ は「磁性体 / 絶縁体 / 磁性体」の 3 層サンドイッチ構造で、上下磁性体の磁化方向が「並列(P 状態、低抵抗)」「反並列(AP 状態、高抵抗)」の 2 状態を取り、それぞれ異なる電気抵抗(TMR、Tunnel Magnetoresistance 効果)を示すため、抵抗測定でビット情報を読み出せます。
世代としては、Toggle MRAM(第 1 世代、2006 商業化、磁界書込)・STT-MRAM(Spin-Transfer Torque、第 2 世代、2012 商業化、電流書込)・SOT-MRAM(Spin-Orbit Torque、第 3 世代、2024 商業化開始、3 端子セル)があり、それぞれ書込メカニズムが異なります。Toggle は外部磁界、STT は MTJ を直接電流で書込み、SOT は別の重金属層に電流を流して書込み(読出と書込パスを分離)する設計です。
主要ベンダーは、米 Everspin Technologies(MRAM 専業、独立系の Toggle / STT-MRAM)・カナダ Avalanche Technology(STT-MRAM 専業)・米 Samsung(28nm STT-MRAM 量産)・米 IBM(40nm STT-MRAM 研究 + 組込)・米 GlobalFoundries(GF12LPP MRAM プロセス、22FDX-MRAM)などです。日本では Renesas / 東芝メモリ(現 Kioxia)・ソニーセミコンダクタ等が研究 / 一部商業化中です。
組込分野では、車載 ECU(Renesas RH850 / NXP S32 系)・産業 PLC・IoT(STM32 系の一部、Microchip PIC32MK 系)・医療機器・航空宇宙用途で採用が広がっています。SRAM 並みの低消費電力 + 不揮発性 + 高速書込書換が評価され、フラッシュ + SRAM の置換用途で 2024-2030 年にかけて市場拡大中です。書換 10^15 回(10 京回)・保持 10 年・低消費電力を両立する次世代メモリの本命候補のひとつとして、特に組込分野で本格普及が予想されています。
| 技術 | 速度 | 書換 | 容量 | 商業化 |
|---|---|---|---|---|
| Toggle MRAM | 50-100ns | 10^15 | 32Mb | 2006 |
| STT-MRAM | 5-50ns | 10^15 | 1Gb |
| 2012 |
| SOT-MRAM | 1-10ns | 10^15 | 試作 | 2024 |
| PCM(Optane) | 50-100ns | 10^5 | 128GB | 2015-2022 |
| RRAM | 10-100ns | 10^6 | 128Mb | 限定 |
| FeRAM | 50-100ns | 10^14 | 16Mb | 2000s 以降 |
MRAM はコンシューマ自作 PC 向け製品ではほとんど普及しておらず、PCIe NVMe SSD / DDR5 メモリの代替としては利用できません。組込 / 業務分野での採用が中心で、Renesas RH850・NXP S32G・Microchip PIC32MK 系のマイコン内蔵メモリとして利用可能ですが、自作 PC ユーザーが直接購入する対象は限定的です。
将来的には、Universal Memory(統一メモリ、DRAM + NAND を MRAM で置換するアーキテクチャ)の研究が進めば、自作 PC のメインメモリ + ストレージ統合の形で MRAM がコンシューマ市場に登場する可能性があります。Samsung / SK hynix / Micron 等が 2030 年頃の Universal Memory 商業化を目標に研究中です。
Q1: MRAM は DRAM や NAND を置き換えますか? A: 短期では組込 + 業務分野での SRAM + フラッシュ置換が中心です。長期(2030 年以降)には Universal Memory として DRAM + NAND を統合する可能性がありますが、容量 / コストで主流化するには時間が必要です。
Q2: STT-MRAM と SOT-MRAM の違いは? A: STT は読出 + 書込が同じパスで行われ高密度ですが書込時に MTJ への電流ストレスが大きい、SOT は別パスで書込みするため寿命が長く高速ですが密度が下がるトレードオフがあります。
Q3: 車載で MRAM が採用されているのはなぜですか? A: 車載 ECU は不揮発性 + 高速書込 + 高耐久(振動 / 温度 / EMI 耐性)を要求するため、SRAM + EEPROM の置換に MRAM が最適です。Renesas / NXP / Infineon が車載グレード MRAM を採用しています。