Open Compute Project (OCP)(オープンコンピュートプロジェクト)
Facebook(現 Meta)が 2011 年に開始したオープンハードウェア規格コンソーシアム。データセンタ向けサーバ / ラック / ネットワーク / ストレージのオープン仕様を策定、Microsoft / Google / Intel / NVIDIA 等 500 社超が参加。
概要
Open Compute Project(オープン コンピュート プロジェクト、OCP)は、Facebook(現 Meta、ザッカーバーグ社)が 2011 年 4 月に開始したオープンハードウェア規格策定コンソーシアムです。Facebook は当時、急速に成長する自社サービスのデータセンタ運用コスト + 効率の問題に直面しており、市販の標準サーバでは要件を満たせない状況にありました。同社のエンジニアリング VP Jonathan Heiliger 主導で、Oregon 州プラインビル(Prineville)データセンタの効率化のために独自設計した「Open Vault」サーバ + Open Rack + 電源 + 冷却の仕様を、業界全体に公開してオープン化することを目的に OCP が設立されました。
Facebook の発想は革新的でした。「Apple のような閉鎖的設計に投資するより、オープン化で業界全体の標準を作るほうが Facebook にも業界にも利益がある」という戦略で、自社のハードウェア設計仕様 / 製造仕様 / 技術ドキュメントをすべて Apache License 2.0 系のオープンライセンスで公開、業界の他社も自由に活用 + 改善 + 製造できる仕組みを構築しました。
OCP は Foxconn / Wiwynn / Quanta などのアジア系 ODM(Original Design Manufacturer)と直接協業して、低コスト + 高効率の OCP 準拠サーバを製造する仕組みを確立しました。これにより、従来の HPE / Dell / IBM / Lenovo 等の大手サーバベンダー(Tier 1 OEM)を経由せずに、Facebook / Microsoft / Google などのハイパースケーラが直接 ODM から OCP 準拠サーバを購入する「ホワイトボックスサーバ」市場が形成され、データセンタ業界の構造を根本的に変革しました。
主要な OCP 仕様群は以下の通りです。Open Rack(従来 19 インチラックの後継、21 インチ幅 + 12V / 48V DC バスバー電源 + 統合冷却)・Open Compute Server(マザーボード仕様 + 電源 + 冷却 + ホットスワップ)・Open Vault(初期 OCP ストレージ JBOD)・Open NIC(SmartNIC / DPU 仕様)・OpenBMC(Baseboard Management Controller オープンソース)・Open AI Hardware(NVIDIA Hopper H100 + Blackwell B100 / B200 世代の GPU サーバ仕様 OAM = OCP Accelerator Module)・OpenSwitch(ネットワークスイッチ OS)などです。
参加メンバーは 500 社超に拡大しており、Microsoft Azure(2014 年から OCP 採用、Project Olympus + 後継仕様)・Google(自社設計 + OCP 部分活用)・Meta(主導)・AWS(部分採用)・LinkedIn(Microsoft 系)・Dropbox / Salesforce / Goldman Sachs / Bank of America(エンタープライズ採用)・Foxconn / Wiwynn / Quanta(ODM)・Intel / AMD / NVIDIA(チップ)などが主要参加者です。
NVIDIA Blackwell 世代(2024-2025)の AI GPU サーバ向け OCP OAM(NVL72 ラック構成等)は、現代の生成 AI 学習 + 推論クラウドの基盤として急速に採用が進んでおり、xAI / OpenAI / Anthropic / Microsoft Azure / AWS 等のハイパースケーラ AI インフラの主流となっています。
主な特徴・仕組み
- 設立: Facebook(現 Meta)2011 年 4 月、Jonathan Heiliger 主導。
- 参加: 500 社超(Microsoft / Google / Intel / NVIDIA / AMD / Lenovo / HPE / Foxconn / Wiwynn / Quanta 等)。
- ライセンス: Apache License 2.0 系のオープンライセンス。
- 主要仕様群: Open Rack / Open Compute Server / Open NIC / OpenBMC / Open AI Hardware(OAM)。
- Open Rack: 21 インチ幅、12V / 48V DC バスバー、統合冷却。
- Open AI Hardware(OAM): NVIDIA Hopper / Blackwell GPU サーバ仕様、NVL72 等。
- ODM パートナー: Foxconn / Wiwynn / Quanta(ホワイトボックスサーバ製造)。
- 採用ハイパースケーラ: Meta(主導)、Microsoft、Google、AWS(部分)、xAI、OpenAI。
- 文化的影響: 「ホワイトボックスサーバ」市場創出、Tier 1 OEM(HPE / Dell / IBM)の脅威。
- 後継仕様: 2024 年 Open AI Hardware Spec v2、2025 年に向けた次世代仕様策定中。
OCP / 競合 / 関連プロジェクト
| プロジェクト | 設立 / 主導 | 範囲 |
|---|---|---|
| OCP | 2011 / Meta | サーバ / ラック / NIC / ストレージ全般 |
| OpenStack | 2010 / Rackspace + NASA | クラウド仮想化 OSS |
| OpenBMC | 2015 / Linux Foundation | サーバ管理 OS |
| LF Edge | 2019 / Linux Foundation | エッジコンピューティング |
| OpenChain Project | 2016 / Linux Foundation | OSS ライセンスコンプライアンス |
自作PCユーザー向けの注意点
OCP はハイパースケーラ + 大規模エンタープライズ向け規格で、コンシューマ自作 PC ユーザーが直接利用する対象ではありません。OCP Open Rack(21 インチ + バスバー電源)は通常の 19 インチ EIA ラック互換ではなく、家庭 / 中小オフィスでは扱えません。
ただし、ホビーホームラボ + 業務知識習得用途では、OCP 準拠 ODM サーバの中古品(Wiwynn / Quanta / Foxconn 等)を eBay / 中古市場で安価に購入することで、業務級データセンタ機材を学習用に運用可能です。Microsoft Project Olympus 派生の OCP 準拠サーバ等が 1 台 ¥30,000-100,000 で稀に流通し、SuperMicro 等の業務用機材より大幅に安価で本格的なサーバ運用学習が可能です。
関連用語との違い
- Open Rack: OCP の主要仕様の 1 つ、21 インチラック + バスバー電源。
- Open AI Hardware(OAM): OCP の AI 機材仕様、NVIDIA H100 / B100 サーバ。
- ホワイトボックスサーバ: OCP 準拠 ODM 製サーバの総称、Tier 1 OEM 非経由で購入。
- Linux Foundation: OCP / OpenBMC / OpenStack 等の OSS プロジェクト推進母体。
- Tier 1 OEM(HPE / Dell / IBM / Lenovo): OCP の脅威となる従来サーバベンダー。
よくある質問(FAQ)
Q1: なぜ Facebook はハードウェア仕様をオープン化したのですか? A: 主因は業界全体の効率化を加速して、Facebook 自身のコストを下げることです。「閉鎖的に独自設計するより、オープンで業界標準にしたほうが ODM 競争 + 量産規模拡大でコスト下がる」という戦略判断でした。結果的にデータセンタ業界全体のコスト削減 + イノベーションを加速しました。
Q2: Tier 1 OEM(HPE / Dell)は OCP の影響でどうなりましたか? A: ハイパースケーラ向け売上が減少し、エンタープライズ + 中小企業向けに事業の重心をシフトしました。HPE 自体も Apollo 系 + Cray 系で OCP 互換 + ハイパースケーラ向け製品を展開しています。
Q3: AI 時代の OCP の役割は? A: NVIDIA Blackwell 世代の AI GPU サーバ仕様(OAM v2、NVL72 ラック等)は OCP 主導で策定されており、現代の生成 AI 学習 + 推論クラウドの基盤となっています。xAI / OpenAI / Microsoft Azure / AWS 等のハイパースケーラ AI インフラの中核を担います。
まとめ
- Meta 2011 年開始のオープンハードウェアコンソーシアム
- Open Rack / NIC / Server / OAM 等の仕様策定
- 500 社超が参加、ハイパースケーラ業界標準
- AI GPU サーバ仕様(OAM v2、NVL72)で現代 AI 基盤を支配