Ring Attention(リングアテンション)(リングアテンション)
複数GPUでシーケンスを分割しリング状の通信パターンでAttentionを計算する分散手法。理論上コンテキスト長を無制限にスケールでき、100万トークン超の処理を実現するコア技術の一つ。
Ring Attention(リングアテンション)とは
Ring Attentionは2023年にUC Berkeley(Hao Liuら)が発表した、複数GPUでTransformerのAttentionを分散計算する手法です。通常のSelf-Attentionが持つ「シーケンス長n²のメモリ・計算コスト」という制約を、GPU間の協調計算によって打破します。
通常のAttentionの限界
TransformerのSelf-Attentionは次の演算が中心です:
Attention(Q, K, V) = softmax(QKᵀ / √d_k) × V
シーケンス長nに対して計算量O(n²)・メモリO(n²)が必要で、1万トークン処理時のAttention行列は100M要素、100万トークンでは1兆要素となり、単一GPUのVRAMでは到底保持できません。
Ring Attentionの仕組み
N個のGPUにシーケンスを均等分割し、Key/Valueを「リング状」にパスしながら各GPUが自分のQueryとの部分Attention積算を繰り返します。
処理フロー:
- シーケンスをN等分 → 各GPUがチャンクを担当
- ステップ1: 各GPUが自分のQ×自分のKを計算(ローカルAttention)
- ステップ2〜N: 隣のGPUからK,Vを受け取りながら累積Attention計算
- 最終的に各GPUが自分のチャンクの完全なAttention出力を持つ
Ring AttentionはFlashAttentionと組み合わせて実装されます。FlashAttentionがGPU内のIO効率を改善し、Ring Attentionが複数GPU間のシーケンス並列化を担当することで二重の最適化を実現します。
Ring AttentionによるコンテキストスケールとGPU数
2 GPUで最大2倍(40K→80Kトークン)、8 GPUで8倍(128K→1Mトークン)、64 GPUで64倍、512 GPU(TPU Pod)では理論上無制限のスケールが可能です。GoogleはTPU v5p Podletでring Attentionを活用してGemini長コンテキスト機能を実現していると報告されています。
JAX実装の概念コード
import jax
import jax.numpy as jnp
def ring_attention_forward(q, k, v, axis_name="sequence"):
"""
q, k, v: (batch, seq_len/N, heads, head_dim) — 各デバイス上のチャンク
"""
n_devices = jax.device_count()
attn_out = jnp.zeros_like(q)
for step in range(n_devices):
# K,Vをリング回転(隣デバイスからP2P転送)
k = jax.lax.ppermute(
k, axis_name=axis_name,
perm=[(i, (i + 1) % n_devices) for i in range(n_devices)]
)
v = jax.lax.ppermute(
v, axis_name=axis_name,
perm=[(i, (i + 1) % n_devices) for i in range(n_devices)]
)
attn_out += local_attention(q, k, v)
return attn_out / n_devices
関連技術との比較
FlashAttentionはIO最適化(単GPU)で〜32K程度のスケーラビリティを持ち実装複雑度は低め。Sparse Attentionは計算省略で〜64K程度、Ring Attentionは分散並列で理論上無制限だが実装複雑度が高い。Sliding Window Attentionはローカル窓方式で精度を犠牲にする実装が簡単な手法です。
まとめ
Ring Attentionは複数GPUをリング状に接続してAttentionを協調計算することで、単一GPU上では不可能なコンテキスト長を実現します。2025年時点でGeminiやその他のフロンティアモデルの長コンテキスト機能を支える基礎技術として定着しており、分散機械学習の重要な手法の一つとなっています。