SD UHS-III(エスディーユーエイチエススリー)
SD Association 策定の SD UHS-III 規格。624MB/s の高速転送をフルサイズ SD カードで実現、SD Express(PCIe Gen 4 x2)とは別系統で従来 UHS-II の上位互換、業務動画用途向け。
概要
SD UHS-III(エスディー ユーエイチエス スリー、Ultra High Speed Phase III)は、SD Association が 2017 年に策定した SD カードの第 3 世代高速インターフェース規格です。UHS-I(2010 / SD 3.01、最大 104MB/s)・UHS-II(2011 / SD 4.0、最大 312MB/s、第 2 列ピン追加)に続く第 3 世代として、最大 624MB/s(フルデュプレックス、両方向同時 624MB/s ずつ)の転送速度を実現しました。
物理的には UHS-II と同じ「第 2 列 8 ピン」インターフェースを採用しつつ、信号速度を 312MB/s から 624MB/s に倍増させ、フルデュプレックス通信(同時送受信)に対応しています。これにより、UHS-II カードリーダー / カメラに対しては UHS-II 互換動作、UHS-III カードリーダー / カメラに対しては UHS-III 高速動作という後方互換性を実現しています。
主な対象市場は業務動画(8K プロフェッショナル動画録画)・連写性能が求められるプロ / ハイアマチュアカメラマン・データロガー / 計測機器の高速ストレージ用途です。SD Express(2018 / SD 7.0、PCIe Gen 3-4 x2、最大 4GB/s)とは別系統で、従来 UHS-II / I カメラ・カードリーダーとの上位互換性を維持しながら高速化したい業務動画 / プロカメラマン向けの中間ポジション規格として位置付けられました。
ただし、市場では SD Express 規格(PCIe ベース、より高速、CFexpress と相互運用しやすい)に比べて UHS-III 採用が低調で、2024-2025 年現在 UHS-III 専用カード / カードリーダー / カメラ製品はほとんど普及していません。実質的には SD Express 系統が主流となり、UHS-III は事実上の「過渡期規格」となっています。
主な特徴・仕組み
- 規格化: SD Association、SD 5.x 仕様、2017 年公開。
- 最大転送速度: 624MB/s フルデュプレックス(双方向同時)。
- インターフェース: UHS-II と同じ第 2 列 8 ピン物理仕様、信号速度 2 倍。
- 互換性: UHS-II / UHS-I カードリーダー・カメラと上位互換。
- カードフォーム: 標準 SD / microSD 共に対応(理論上)。
- 動画録画: 8K Pro 動画 / 高 bitrate / 連写バーストに対応。
- 競合規格: SD Express(PCIe Gen 3-4 x2、4GB/s)、CFexpress Type A / B(PCIe Gen 3-4 x1-2)。
- 市場普及: 限定的、SD Express への移行で過渡期規格。
- 採用カメラ: 限定的、Sony α / Panasonic Lumix の一部業務機。
SD UHS / Express / CFexpress 比較
| 規格 | 公開年 | 最大速度 | バス | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| UHS-I | 2010 | 104MB/s | 専用バス | 一般カメラ |
| UHS-II | 2011 | 312MB/s | 専用 + 第 2 列ピン | 4K 動画 |
| UHS-III | 2017 | 624MB/s フルデュプレックス | 専用 + 第 2 列ピン | 8K プロ動画 |
| SD Express | 2018 | 985MB/s(Gen 3 x1)〜4GB/s(Gen 4 x2) | PCIe + NVMe | 8K + 業務 |
| CFexpress Type A | 2019 | 1GB/s | PCIe Gen 3 x1 | Sony α |
| CFexpress Type B | 2017 | 2GB/s | PCIe Gen 3 x2 | Z mount Nikon / Canon |
自作PCユーザー向けの注意点
SD UHS-III カード / カードリーダーは 2024-2026 年現在も限定的にしか流通しておらず、Amazon / Yodobashi で入手するのは困難です。代わりに SD Express 規格(SanDisk Extreme PRO SD Express ・ Sony Tough G シリーズ Express 等)が主流となっており、業務動画用途では SD Express を選ぶのが現実的です。
カメラ側でも UHS-III 専用対応機種は限定的で、ハイエンド業務動画機(Sony PXW-Z200・Panasonic AU-EVA1 等)の一部での採用に留まっています。コンシューマ用途では UHS-II(最大 312MB/s)で十分で、それ以上の高速ニーズは SD Express / CFexpress 系統に移行するのが効率的です。
関連用語との違い
- UHS-I / UHS-II: 前世代 SD 高速規格、UHS-II は第 2 列ピン追加で物理拡張。
- SD Express(2018): PCIe + NVMe ベース、UHS-III の事実上の後継。
- CFexpress Type A / B: 別系統業務カード、CFast の後継。
- microSD UHS-III: 物理形状を microSD に縮小した版、こちらも普及限定的。
よくある質問(FAQ)
Q1: なぜ UHS-III は普及しなかったのですか? A: SD Express(2018、PCIe Gen 3-4 x2、最大 4GB/s)が 1 年後に登場し、より高速 + CFexpress と相互運用しやすい設計だったため、業界が SD Express 採用へ流れたためです。UHS-III は事実上「過渡期規格」となりました。
Q2: UHS-II との違いは? A: 物理ピン形状は同じですが、信号速度が 2 倍(312MB/s → 624MB/s)で、フルデュプレックス通信(双方向同時)に対応しました。後方互換性は維持されています。
Q3: 8K プロ動画には UHS-III と SD Express どちらが良いですか? A: 業界標準では SD Express(PCIe Gen 4 x2、4GB/s)が主流で、UHS-III カード対応機材が少ないため SD Express を選ぶのが現実的です。
まとめ
- SD Association 2017 年第 3 世代高速インターフェース規格
- 最大 624MB/s フルデュプレックス、UHS-II 上位互換
- SD Express(2018、PCIe + NVMe)に主導権を奪われ普及限定的
- 業務動画 / プロカメラマン向けの過渡期規格