米 IBM が 1985 年策定の IEEE 802.5 LAN 規格。トークンパッシングでデータ衝突回避、4 / 16 / 100Mbps を段階展開、IBM メインフレーム接続で 1980-1990 年代企業 LAN 主流の一角だが Ethernet に敗北。
Token Ring(トークン リング)は、米 IBM が 1985 年に策定し IEEE 802.5 として標準化された LAN 規格です。IBM 自身の研究所で 1980 年代前半から開発が進み、1985 年 10 月に公開されました。米国 IBM とスイス IBM Zurich Research Lab が共同開発し、企業 LAN の本命として 1980 年代後半に大々的に投入されました。
技術的には、トークンパッシング方式を採用しています。物理的には MAU(Multistation Access Unit)というハブ装置にステーションがスター状に接続され、論理的にはリング状にトークン(送信権)が巡回する構成です。データ送信したいステーションはトークンが来るのを待ち、送信権を握ってから自分のフレームを送信する仕組みです。これにより Ethernet の CSMA/CD のような衝突検知が不要で、高負荷時でも安定したスループットを発揮します。
速度は 4Mbps(初代、1985)→ 16Mbps(1989、Token Ring V2)→ 100Mbps(High-Speed Token Ring、1998)と段階的に高速化しました。物理層は STP(Shielded Twisted Pair、3.5φ シールド付ツイストペア)ケーブルが標準で、後に UTP(Cat 3 以上)/ 光ファイバ対応も追加されました。最大ノード数は STP で 260 / UTP で 72、伝送距離は数百 m スケールでした。
主な採用用途は IBM メインフレーム(System/370 / 3090 / ES/9000)・AS/400 ミッドレンジ・OS/2 Warp ワークステーションの相互接続インターフェースで、1980-1990 年代の企業 LAN 主流の一角を占めました。特に銀行 / 保険 / 政府機関 / 大企業の業務基幹系で広く採用され、IBM のフラッグシップ LAN 規格として君臨しました。
しかし、競合の Ethernet(IEEE 802.3)が CSMA/CD 衝突検知方式 + 低価格 + 段階的高速化で巨大な勢いを得ました。10Mbps Ethernet(1980)→ 100Mbps Fast Ethernet(1995)→ 1Gbps Gigabit Ethernet(1998)→ 10Gbps 10G Ethernet(2002)と進化が続き、価格は Token Ring の 1/3-1/5 を維持しながら、速度では Ethernet が逆転 → 圧倒する状況になりました。さらに Ethernet の Switched LAN(マイクロセグメンテーション)+ STP / RSTP プロトコルで衝突問題が事実上解消され、Token Ring の最大の利点(高負荷安定性)も無効化されました。
2000 年代に入ると IBM 自身が Token Ring 製品から撤退、IBM ThinkPad / NetVista 系 PC でもデフォルトで Ethernet を採用、企業 LAN 市場では事実上 Ethernet 一色となりました。現在は完全に消滅した規格で、レガシーシステムの保守 / レトロ IBM 環境再現でしか目にすることはありません。
| 規格 | 速度 | 方式 | 価格 / ポート |
|---|---|---|---|
| Token Ring 16Mbps | 16Mbps | Token Passing | $300-500 |
| Fast Ethernet 100Mbps | 100Mbps | CSMA/CD | $50-100 |
| FDDI 100Mbps | 100Mbps |
| Token Passing |
| $1,500-3,000 |
| ARCNET 2.5Mbps | 2.5Mbps | Token Passing | $100-200 |
| ATM 155Mbps | 155Mbps | Cell Switching | $2,000-5,000 |
Token Ring は現在新規購入できませんが、レトロ IBM PC / OS/2 環境構築マニアにとっては魅力的なコレクション対象です。中古市場では IBM Token Ring ISA / PCI カード(IBM TR16/A2、ICA Pn 等)が ¥3,000-10,000、MAU(IBM 8228)が ¥10,000-30,000 で稀に流通中です。
注意点として、Token Ring ドライバは IBM PC-DOS / OS/2 Warp / Windows 9x / NT 4.0 にしか含まれておらず、Windows 7 以降では非対応です。レトロ IBM 環境(IBM PS/2 / OS/2 Warp / AS/400 ターミナル接続)を再現する用途以外では使えません。当時の IBM 業務基幹レトロ環境を体験したいマニア向けの存在となっています。
Q1: なぜ Token Ring は Ethernet に負けたのですか? A: Ethernet の低価格 + 段階的高速化(10Mbps → 100Mbps → 1Gbps → 10Gbps)+ IEEE 標準化 + Switched LAN の登場が主因です。Token Ring の利点(高負荷安定性)は Switched Ethernet の登場で無効化され、価格 + 速度 + 互換性で Ethernet が圧倒的に優位になりました。
Q2: 現代でも Token Ring が使われている分野はありますか? A: 事実上ありません。2000 年代半ばに IBM 自身が撤退、企業 LAN 市場から完全に消滅しました。レガシー IBM AS/400 + OS/2 Warp 業務基幹システムの保守 / レトロ環境再現でのみ目にすることがあります。
Q3: なぜ IBM は Token Ring を捨てたのですか? A: 価格 + 速度 + シェア + 互換性のすべてで Ethernet に劣勢となり、自社の Token Ring 製品ラインを維持するメリットがなくなったためです。IBM 自身が 2000 年代に ThinkPad / NetVista の標準 LAN を Ethernet に切替えて事実上撤退しました。