USB PD(Power Delivery)パススルー充電とは、USB-Cハブやドッキングステーションを経由してノートPCに電力を供給する機能である。ハブに充電器を接続すれば、データ転送と充電を1本のUSB-Cケーブルで同時に行える。
USB PDパススルー充電は、USB-Cハブの最も重要な機能の1つである。ノートPCの限られたUSB-Cポートを拡張デバイスで使用しながら、同時に充電も継続できる。充電器からの電力がハブを「パススルー(通過)」してPCに供給される仕組みだ。
USB Power Delivery規格は段階的に充電能力を拡張してきた。
| 規格 | 最大電力 | 電圧 | 対応デバイス |
|---|---|---|---|
| USB PD 2.0 | 100W | 5/9/15/20V | 一般的なノートPC |
| USB PD 3.0 | 100W | 5/9/15/20V + PPS | ノートPC + スマホ急速充電 |
| USB PD 3.1 SPR | 100W | 5/9/15/20V + PPS | 標準パワーレンジ |
| USB PD 3.1 EPR | 240W | 28/36/48V追加 | ゲーミングPC・ワークステーション |
2026年のUSB PD 3.1 EPR(Extended Power Range)は、従来の100W制限を大幅に超え、最大240Wの電力供給を実現する。これによりMacBook Pro 16インチ(140W)やゲーミングノート(180W+)もUSB-Cケーブル1本で充電可能になった。
パススルー充電の電力経路:
重要な注意点として、ハブ自体が5-15Wの電力を消費するため、パススルーされる電力は充電器の出力から10-15%程度減少する。例えば100W充電器を使用した場合、PCに届く電力は85-90W程度である。
充電器の電力をほぼそのままPCに供給。ハブは別電源(内蔵電源や別のUSBポート)で動作。高級ドッキングステーションに多い。
充電器の電力をハブの動作電力とPC充電で共有。コンパクトハブに多い設計。100W入力でPC充電は85-90W程度。
2つのUSB-C PDポートから同時に充電を受け、合計電力を供給。一部の高機能ドックで採用。
| PC | 必要電力 | 推奨パススルー |
|---|---|---|
| MacBook Air | 30-45W | 65W以上 |
| MacBook Pro 14 | 70W | 96W以上 |
| MacBook Pro 16 | 140W | 140W EPR |
| Dell XPS 15 | 90-130W | 100W以上 |
| ThinkPad X1 | 65W | 96W以上 |
| ゲーミングノート | 150-230W | 240W EPR |
パススルー充電のワット数は「ハブの対応ワット数」と「充電器の出力ワット数」の低い方に制限される。100Wパススルー対応ハブに65W充電器を接続しても、供給されるのは65W(マイナスハブ消費分)である。
PPSはきめ細かい電圧・電流制御を行う規格で、スマートフォンの急速充電(Samsung 45W、Google 30W等)に必要。ハブ経由でスマホを急速充電したい場合はPPS対応モデルを選ぶ。
Q1: パススルー充電でバッテリーは劣化しますか? A: パススルー充電自体がバッテリーを劣化させることはありません。USB PDプロトコルで適切な電圧・電流が制御されるため、直接充電と同等の安全性です。ただし、PCが高負荷で充電電力が不足すると充放電が繰り返され、長期的にバッテリーに悪影響を及ぼす可能性があります。十分なワット数の充電器を使用することが重要です。
Q2: 100W充電器で140W必要なPCを使えますか? A: 使用は可能ですが、高負荷時にバッテリーが減少します。例えばMacBook Pro 16インチに100Wで充電しながら動画編集をすると、消費電力が充電電力を上回り、バッテリー残量が徐々に減少します。軽作業なら100Wでも十分な場合が多いですが、フルパフォーマンスを発揮するには140W EPR対応の充電器とハブが推奨されます。
Q3: パススルー充電中にデータ転送速度は落ちますか? A: USB PD充電はデータ転送と独立したプロトコルで動作するため、パススルー充電がデータ転送速度に直接影響することはありません。ただし、ハブのコントローラーチップの発熱が増加し、サーマルスロットリングが発生する可能性はあります。十分な放熱設計のハブを選ぶことで回避できます。