AI・機械学習
中級

語彙サイズ(Vocabulary Size)(ゴイサイズ)

語彙サイズはトークナイザが保持するユニークトークンの総数を指し、LLMの圧縮効率・多言語対応・メモリ消費に直結する重要なハイパーパラメータである。

0 回閲覧
0 いいね

語彙サイズ(Vocabulary Size)とは

語彙サイズは、LLMのトークナイザが保持するユニークなトークン(サブワード)の総数を指す。この値はモデル設計時に決定される重要なハイパーパラメータであり、テキスト圧縮効率、多言語対応能力、埋め込み層のメモリ消費量に直接影響する。GPT-4oは200,000、LLaMA 3は128,256、BERTは30,522、Gemma 2は256,000と、モデルの世代と用途によって大きく異なる。

語彙サイズが影響する要素

語彙サイズの選定は以下の要素にトレードオフとして影響する:

  1. 圧縮効率(fertility): 語彙が大きいほど、1トークンが長い文字列に対応し、同じテキストをより少ないトークンで表現できる
  2. 埋め込み層パラメータ数: 語彙サイズ × 埋め込み次元がパラメータ数。200K × 4,096次元 = 約8億パラメータが埋め込み層だけで必要
  3. 多言語カバレッジ: CJK文字や稀少言語をカバーするには大きな語彙が必要
  4. 未知語(OOV)率: 語彙が小さいと頻出でないサブワードが細かく分割され、文脈理解が困難になる
  5. 推論速度: 語彙が大きいとsoftmax計算(語彙サイズ次元)のコストが増大

主要LLMの語彙サイズ推移

モデルリリース年語彙サイズ対応言語数埋め込み次元埋め込みパラメータ
GPT-2201950,257英語中心76838.6M
BERT-base201830,522英語76823.4M
T5-base201932,100英語76824.7M
LLaMA 2202332,000英語中心4,096131M
Mistral 7B202332,768英語中心4,096134M
LLaMA 32024128,256多言語4,096525M
GPT-4o2024200,000多言語非公開非公開
Gemma 22024256,000多言語3,584917M
NLLB-2002022256,206200言語1,024262M

2019-2024年にかけて、語彙サイズは30K→256Kへと約8倍に拡大した。主因は多言語対応の強化と、コンテキスト長拡大による圧縮効率の重要性増加である。

語彙サイズと日本語の関係

日本語はひらがな(46字)、カタカナ(46字)、漢字(常用2,136字+)、英数字が混在するため、語彙サイズの影響を受けやすい:

モデル語彙サイズ「東京都渋谷区」のトークン数1文字あたりトークン数
GPT-250,2578-121.3-2.0
GPT-4o200,0003-50.5-0.8
LLaMA 232,00010-151.7-2.5
LLaMA 3128,2564-60.7-1.0
Gemma 2256,0002-40.3-0.7

大語彙モデル(GPT-4o、LLaMA 3、Gemma 2)は日本語の圧縮効率が大幅に改善されており、API料金やコンテキスト窓の利用効率が向上する。

語彙サイズの設計指針

新規モデル学習時の語彙サイズ選定ガイドライン:

  • 英語特化・小規模モデル(< 1B): 32,000-50,000。埋め込み層のオーバーヘッドを抑制
  • 英語特化・大規模モデル(> 7B): 50,000-100,000。十分な圧縮効率を確保
  • 多言語モデル: 100,000-256,000。CJK文字+稀少言語のカバレッジ確保
  • コード特化モデル: 50,000-100,000。プログラミング言語のキーワード・構文を効率化
  • ドメイン特化(医療・法律等): 基盤モデル語彙+ドメイン用語5,000-20,000を追加

よくある質問(FAQ)

Q1: 語彙サイズを後から変更できますか? A: 技術的には可能だが、実質的にはモデル全体の再学習が必要。埋め込み層のパラメータが変わるため、既存の重みは使えない。語彙拡張(追加のみ)なら既存重みを保持して新トークンの埋め込みのみ学習する手法(vocabulary expansion)がある。

Q2: 語彙サイズが大きいモデルは必ず優れていますか? A: 多言語対応や圧縮効率では有利だが、埋め込み層のメモリ増大、softmax計算コスト増加、学習データ不足による稀少トークンの品質低下というデメリットもある。タスクと制約に応じた適切なサイズ選定が重要。

Q3: 語彙サイズはAPIの料金にどう影響しますか? A: 語彙サイズが大きいトークナイザは同じテキストをより少ないトークンで表現するため、トークン課金のAPIではコスト削減につながる。GPT-4oはGPT-3.5比で日本語テキストのトークン数が約30-40%削減されており、同内容の処理コストが下がっている。

まとめ

  • 語彙サイズはトークナイザのユニークトークン総数で、30K-256Kの範囲が一般的
  • 大語彙は圧縮効率・多言語対応に有利だが、メモリ消費が増大する
  • 2019-2024年で主要LLMの語彙は30K→256Kへ約8倍に拡大
  • 日本語は大語彙モデルで圧縮効率が大幅改善(GPT-4o: GPT-2比2-3倍効率化)
  • 語彙サイズはAPI料金・コンテキスト窓利用効率に直結する重要パラメータ