WPC(Wireless Power Consortium)が 2023 年に策定したワイヤレス充電の次世代標準規格。Apple の MagSafe 技術をベースにした Magnetic Power Profile(MPP)を採用し、マグネットによる正確な位置合わせと最大 15W の充電を実現する。iPhone・Android 両陣営が対応し、ワイヤレス充電のユニバーサル規格となった。
Qi2(チーツー)は、WPC(Wireless Power Consortium)が 2023 年 1 月の CES で発表し、同年後半から製品展開が始まったワイヤレス充電の国際標準規格である。初代 Qi 規格の後継として、Apple が独自開発した MagSafe のマグネット位置合わせ技術を業界標準として組み込んだ点が最大の特徴だ。
Qi2 は 2 つのプロファイルで構成される:
WPC には Apple、Samsung、Google、Xiaomi、LG、Belkin、Anker など 350 社以上が加盟しており、Qi2 はワイヤレス充電のデファクトスタンダードとして急速に普及している。
旧 Qi 規格と Qi2 規格の主要な違いを比較する:
| 項目 | Qi(初代) | Qi2(2023〜) |
|---|---|---|
| 最大出力 | 15W(EPP) | 15W(MPP/EPP)※将来 30W+ 拡張予定 |
| 位置合わせ | なし(手動) | マグネット自動(MPP) |
| 効率 | 60〜75% | 75〜88%(位置精度向上による) |
| 異物検知 | 基本レベル | 強化版 FOD |
| 認証方式 | Qi ロゴ | Qi2 ロゴ(MPP/EPP 区別あり) |
| MagSafe 互換 | なし | MPP は MagSafe アクセサリと互換 |
| 後方互換性 | — | Qi デバイスも充電可能 |
| 通信プロトコル | WPC 1.x | WPC 2.x(双方向通信強化) |
Qi2 最大の革新はマグネットによる位置合わせの標準化である。旧 Qi 規格ではパッド上の正確な位置にデバイスを置く必要があり、数ミリのずれで充電効率が 30〜50% 低下することが日常的な不満だった。Qi2 の MPP ではマグネットがデバイスを最適位置に自動的に吸着するため、置くだけで最大効率の充電が始まる。
Qi2 MPP の内部構造を理解するための技術解説:
Qi2 MPP は 17 個の N52 グレードネオジム磁石を直径 56mm のリング状に配置している。この配置は Apple MagSafe と完全に同一で、既存の MagSafe アクセサリ(ケース・カードウォレット・車載マウント)との物理的互換性がある。吸着力は約 1,100g 重(10.8N)で、ポケットからの取り出し程度の力では外れないが、意図的に引っ張れば容易に取り外せる設計だ。
送電コイルはリッツ線(細い銅線を撚り合わせた高周波損失低減構造)を使用し、110〜205kHz の動作周波数で最大 15W を伝送する。マグネットによる正確な位置合わせにより、コイル間距離が常に最適(2〜5mm)に保たれるため、旧 Qi より 10〜15% 高い伝送効率を実現する。
Qi2 では充電パッドとデバイス間の通信プロトコルが大幅に強化された。デバイスは自身のバッテリー状態・温度・充電要求ワット数をリアルタイムで充電パッドに伝達し、パッド側はそれに応じて出力を動的に調整する。この双方向通信により、過充電防止・過熱保護・異物検知の精度が旧 Qi より大幅に向上している。
2026 年時点で Qi2 MPP に対応する主要デバイス:
| メーカー | デバイス | 対応年 | 最大受電 |
|---|---|---|---|
| Apple | iPhone 16 / 16 Pro シリーズ | 2024 | 15W(25W MagSafe 専用充電器で) |
| Apple | iPhone 15 / 15 Pro シリーズ | 2023 | 15W |
| Apple | iPhone 12〜14 シリーズ | 2020-2022 | 15W(MagSafe として) |
| Samsung | Galaxy S26 シリーズ | 2026 | 15W |
| Samsung | Galaxy S25 シリーズ | 2025 | 15W |
| Pixel 10 シリーズ | 2026 | 15W(予定) | |
| Pixel 9 シリーズ | 2024 | 12W | |
| Xiaomi | Xiaomi 16 シリーズ | 2026 | 15W(中国版は 50W) |
| OnePlus | OnePlus 14 | 2026 | 15W |
| Motorola | Edge 60 | 2026 | 15W |
Android 陣営の Qi2 対応は 2025 年以降の製品で急速に広がっており、2026 年のフラッグシップモデルではほぼ標準搭載となった。ミッドレンジ帯(3〜5 万円クラス)への浸透も進んでおり、2027 年にはエントリーモデルにも搭載が見込まれている。
WPC は Qi2 の段階的な機能拡張を計画している:
特に 30W 以上への出力拡大は、ワイヤレス充電が有線充電を代替できるかどうかの分水嶺となる。現在の 15W では iPhone のフル充電に約 2 時間かかるが、30W であれば 1 時間程度に短縮される見込みだ。
Qi2 認証は WPC が定める厳格なテストプログラムを通過した製品にのみ付与される。認証プロセスには電磁適合性(EMC)試験、安全性試験、相互運用性試験が含まれ、認証取得には通常 3〜6 ヶ月と数百万円のコストがかかる。
消費者が Qi2 認証製品を見分けるポイント:
無認証品は過熱保護や異物検知が不十分で、最悪の場合デバイスの損傷や発火事故につながるため、必ず認証品を選ぶべきだ。
Qi2 規格の普及は自作 PC デスク環境にも影響を及ぼしている:
A: 充電できる。Qi2 充電パッドは EPP(Extended Power Profile)による後方互換性を備えており、旧 Qi 対応デバイスを載せれば自動的に旧 Qi モードで充電が開始される。ただしマグネット位置合わせ機能は使えないため、手動で正しい位置に置く必要がある。出力は旧デバイスの対応ワット数(5W〜10W)に制限される。
A: 推奨しない。Qi2 認証は WPC が定める安全基準(過熱保護・異物検知・電磁波規制)を満たした製品にのみ付与される。無認証品はこれらの保護機能が不十分なことがあり、発熱事故や異物による発火のリスクがある。特に金属製コインや鍵が充電パッド上にある状態で充電すると、異物が急速に加熱される危険がある。Qi2 ロゴが製品パッケージに印刷されていることを確認してから購入すること。
A: 完全に同じではないが、互換性がある。MagSafe は Apple の独自ブランド名で、Qi2 MPP は Apple が MagSafe のマグネット技術を WPC に提供して標準化したもの。物理的なマグネット配置は同一であるため、Qi2 MPP 対応の充電パッドで iPhone の MagSafe 充電ができ、MagSafe 充電器で Qi2 対応 Android を充電できる。ただし Apple は MagSafe 認証(MFi)の充電器に対して追加の最適化(最大 25W 充電など)を行っており、非 MFi の Qi2 充電器では出力が 15W に制限される場合がある。
A: 強く推奨する。Qi2 MPP のマグネット位置合わせ機能を活かすには、ケース内部にもマグネットリングが内蔵されている必要がある。マグネットなしの通常ケースでは Qi2 充電パッドに載せても磁力で吸着せず、手動で位置を合わせる旧 Qi と同じ使い勝手になってしまう。Qi2/MagSafe 対応ケースは Apple 純正のほか、Spigen・OtterBox・Casetify・ESR など多くのメーカーから 1,500〜5,000 円で販売されている。TPU やシリコン素材で厚み 2mm 程度のものなら充電効率への影響もほぼない。Android の場合は Samsung や Google が純正マグネットケースを展開しているほか、サードパーティからも Qi2 対応ケースが続々と登場している。
A: 当面の間は問題なく使える。Qi2 は旧 Qi との後方互換性を完全に維持しており、旧 Qi 充電パッドで Qi2 対応スマホを充電することも、Qi2 充電パッドで旧 Qi スマホを充電することも可能。WPC は旧 Qi 規格を廃止する予定を発表しておらず、既存の数十億台の旧 Qi 対応デバイスが市場に存在する以上、サポートは長期間継続される見通しだ。ただし新製品の開発は Qi2 に移行しているため、旧 Qi 専用充電器の新機種は減少傾向にある。