CADR値(シーエーディーアールチ)
CADR値(Clean Air Delivery Rate / クリーンエア供給率)とは、空気清浄機が1分間に供給できる清浄空気の量を示す国際標準指標である。AHAM(アメリカ家電製品協会)のAC-1規格で定義され、煙(Smoke)・ホコリ(Dust)・花粉(Pollen)の3種類の粒子それぞれに対して測定される。数値が大きいほど清浄能力が高い。
CADR値とは
CADR(Clean Air Delivery Rate)は、空気清浄機の性能を客観的に比較するためにAHAM(Association of Home Appliance Manufacturers)が1988年に策定した国際標準指標である。単位はCFM(Cubic Feet per Minute)またはm³/h(立方メートル毎時)で表示される。1 CFM ≒ 1.7 m³/h である。
CADR値は「フィルターの捕集効率×風量」で決まるため、フィルター性能だけでなく、ファンの風量・本体の気流設計・フィルター面積といった総合的な清浄能力を反映する。同じHEPAフィルターを搭載していても、気流設計の違いでCADR値は大きく異なる。
日本ではJEM 1467規格(日本電機工業会規格)に基づくクリーンエア供給量が用いられ、測定条件はAHAMとほぼ同等だが、表示単位はm³/hに統一されている。
測定方法
試験条件
CADR値の測定は、容積約28.5m³(1,008立方フィート)の試験チャンバーで行われる。チャンバー内に特定の粒子を一定濃度で散布し、空気清浄機を最大風量で稼働させた場合の粒子濃度の減衰速度を測定する。
| 粒子種別 | 粒径範囲 | 代表的粒径 | 対応する汚染物質 |
|---|---|---|---|
| Smoke(煙) | 0.09-1.0μm | 0.1-0.3μm | タバコの煙、PM2.5 |
| Dust(ホコリ) | 0.5-3.0μm | 0.5-1.0μm | ハウスダスト、カビ胞子 |
| Pollen(花粉) | 5.0-11.0μm | 5-10μm | スギ花粉、ヒノキ花粉 |
計算式
CADR = (自然減衰を除いた清浄化速度) × チャンバー容積
自然減衰(粒子が自重で沈降する速度)を差し引くことで、空気清浄機の純粋な清浄能力を算出する。煙粒子は自然減衰が小さいため、空気清浄機の性能が最も正確に反映される指標とされる。
CADR値の読み方と適用畳数
2/3ルール
AHAMは「CADR値(CFM)の2/3の数値が、その清浄機に適した部屋の面積(平方フィート)」という簡易換算ルールを推奨している。
日本の畳換算では以下の目安となる。
| CADR (m³/h) | 適用畳数(目安) | 代表的クラス |
|---|---|---|
| 100-200 | 6-10畳 | コンパクトモデル |
| 200-400 | 10-23畳 | 標準モデル |
| 400-600 | 23-35畳 | 大型モデル |
| 600-800 | 35-48畳 | 最上位モデル |
3粒子のバランス
花粉対策を重視するならPollen CADRが高いモデル、PM2.5やタバコの煙対策ならSmoke CADRが高いモデルを選ぶべきである。多くのHEPAフィルター搭載モデルでは3粒子のCADR値は近い値となるが、電気集塵式や簡易フィルター式ではSmoke CADRが低い傾向がある。
主要機種のCADR値比較
| メーカー | 機種 | Smoke CADR | Dust CADR | Pollen CADR | 実売価格 |
|---|---|---|---|---|---|
| ブルーエア | Blue Max 3450i | 375 CFM (637 m³/h) | 378 CFM | 385 CFM | 約55,000円 |
| Coway | AIRMEGA 400S | 350 CFM (595 m³/h) | 352 CFM | 360 CFM | 約50,000円 |
| ウィニックス | AM90 | 300 CFM (510 m³/h) | 305 CFM | 312 CFM | 約28,000円 |
| レボイト | Core 600S | 410 CFM (697 m³/h) | 405 CFM | 415 CFM | 約35,000円 |
| シャープ | KI-SX100 | -(JEM 1467) | - | - | 約75,000円 |
※日本メーカーの多くはAHAM CADR値を公表せず、JEM 1467規格のクリーンエア供給量で表示している。シャープ KI-SX100のJEM適用畳数は46畳(約680 m³/h相当)。
CADR値の限界
最大風量での測定
CADR値は最大風量での測定値であるため、実際の使用時(自動モード・静音モード)の清浄能力はCADR値より低くなる。静音モードでは風量が最大の20-30%に制限されるため、CADR値も同程度に低下する。
ガス状汚染物質は評価外
CADR値は粒子状物質の除去能力のみを評価し、VOC(ホルムアルデヒド・トルエンなど)やNO₂、O₃などのガス状汚染物質は対象外である。ガス除去能力の評価にはAHAM AC-5規格や、活性炭フィルターの吸着量試験(JIS B 9908)が別途必要となる。
フィルター劣化は未反映
新品フィルターでの測定値であるため、経年使用によるフィルター劣化は反映されていない。6ヶ月使用後のCADR値は、製品によって10-40%低下するとの報告がある。
エネルギー効率(CADR/W比)
CADR値だけでなく、消費電力あたりのCADR値(CADR/W比)も重要な選択基準である。Energy Starの認証基準では、フロア型空気清浄機はCADR/W比2.0以上(Smoke CADR基準)が求められる。
| 機種 | Smoke CADR (CFM) | 最大消費電力 (W) | CADR/W比 |
|---|---|---|---|
| レボイト Core 600S | 410 | 53W | 7.7 |
| ブルーエア Blue Max 3450i | 375 | 64W | 5.9 |
| Coway AIRMEGA 400S | 350 | 69W | 5.1 |
| ウィニックス AM90 | 300 | 80W | 3.8 |
FAQ
Q1: CADR値が高いほど良い空気清浄機なのか?
CADR値が高いほど清浄速度は速いが、それだけでは十分な判断基準にならない。騒音レベル、フィルター寿命、ランニングコスト、操作性、デザインも重要な選択要素である。CADR値600 m³/hのモデルが最大風量時に60dB(通常の会話レベル)の騒音を発する場合、寝室での常時運転は現実的でない。静音モードのCADR値と騒音値を併せて確認すべきである。
Q2: 日本メーカーの製品でCADR値がわからない場合は?
日本メーカーはJEM 1467規格の「適用畳数」を公表しており、これはCADR値と同等の指標である。適用畳数にJEM係数(0.66 m³/分/畳 × 60)を掛けることで概算のCADR値(m³/h)を算出できる。例えば40畳対応なら約660 m³/h(≒388 CFM)に相当する。
Q3: CADR値は自分で測定できるか?
家庭での正確なCADR値測定は困難だが、PM2.5センサー(約3,000-10,000円)を使って簡易的な清浄速度評価は可能である。部屋を閉め切った状態でPM2.5濃度を記録し、空気清浄機を稼働した後の濃度変化を測定する。30分で半減すれば、その部屋に対して十分な清浄能力があると判断できる。