CD-R 史(シーディーアールシ)
1988 年 Philips / Sony 共同策定の CD-Recordable 記録規格。650MB / 700MB の一回書込型光ディスクで 1990 年代後半に大ヒット、Imation / 三菱化学 / 太陽誘電が主要メーカー、2000 年代後半 DVD-R / USB に移行した媒体。
概要
CD-R(シーディー アール、CD-Recordable)は、1988 年に Philips / Sony が共同策定した一回書込型(WORM、Write-Once Read-Many)光ディスク規格です。Orange Book Part II として ISO 規格化され、Compact Disc(CD-DA / CD-ROM)の物理仕様と互換性を維持しつつ、ディスク基盤の有機色素層をレーザーで焼き込むことでデータ書込みを実現する画期的な技術でした。
容量は標準 650MB(74 分音楽相当)で、1990 年代中盤から 700MB(80 分)・900MB(99 分、非標準)が登場、当時のフロッピー(1.44MB)比 450 倍超の大容量を実現しました。1990 年代後半に CD-R ドライブが ¥10,000-30,000 まで、メディアが 1 枚 ¥100-300 まで降り、PC データバックアップ / 音楽 CD 自作 / 写真保存 / ソフトウェア配布の新標準として大ヒットしました。
主要メディア生産メーカーは Imation(米)、三菱化学(国産、Verbatim ブランド)、太陽誘電(That's ブランド、音楽用業界標準)、TDK、三井化学、Verbatim、Maxell、SONY、Mitsubishi、Princo(台湾)、Mr. DATA(台湾)等で、特に太陽誘電 That's は「音楽プロが選ぶ最高品質メディア」としてオーディオファイル / プロエンジニアから絶大な信頼を得ていました。
2000 年代後半に入り、DVD-R(4.7GB、CD-R の 7 倍容量)・USB フラッシュメモリ(2-128GB、即時書込書換可能)・クラウドストレージの台頭で需要は急減、太陽誘電は 2015 年に CD-R / DVD-R 撤退、Imation も同時期に撤退と主要メーカーが順次離脱しました。現在は三菱化学(Verbatim、現在 CMC Magnetics 傘下)が継続生産しているのみで、長期保存と互換性を理由に音楽業界(マスタリング送付用)・政府文書 / 医療画像のアーカイブで継続利用されています。
主な特徴・仕組み
- 記録方式: 一回書込型(WORM)、有機色素層をレーザー焼込。
- 容量: 650MB(74 分)/ 700MB(80 分)/ 900MB(99 分、非標準)。
- 標準: ISO 9660(ファイルシステム)、CD-Audio(音楽)、Joliet(Win 拡張)、Rock Ridge(UNIX 拡張)。
- 規格書: Orange Book Part II(Philips / Sony 1988)。
- 書込速度: 1x(150KB/s)→ 52x(7.8MB/s)で進化。
- メディア寿命: 公称 30-100 年(色素 / 保管環境により変動、フタロシアニン系が長持ち)。
- 主要 MFG: 太陽誘電 That's / 三菱化学 Verbatim / Imation / TDK / 三井化学 / Mr. DATA / Princo。
- ドライブ世代: 1x(1990)→ 2x(1992)→ 4x / 8x / 16x / 32x / 48x / 52x / 56x。
- 衰退: 2010 年代に DVD-R / USB / クラウドへ移行、2015 年太陽誘電 / Imation 撤退。
CD-R / DVD-R / Blu-ray 比較
| メディア | 容量 | 公開年 | 寿命 | 結末 |
|---|---|---|---|---|
| CD-R | 650-700MB | 1988 | 30-100 年 | 縮小・継続 |
| CD-RW | 650-700MB | 1997 | 1000 回書換 | ほぼ消滅 |
| DVD-R | 4.7GB | 1997 | 30-100 年 | 縮小・継続 |
| DVD+R DL | 8.5GB | 2003 | 30-100 年 | ほぼ消滅 |
| BD-R | 25-50GB | 2002 | 50-100 年 | 業務継続 |
| BD-R XL | 100-128GB | 2010 | 50-100 年 | 業務継続 |
自作PCユーザー向けの注意点
CD-R は 2024 年現在も三菱化学 Verbatim ブランドで継続生産中で、国内では家電量販店 / Amazon で 50 枚 ¥1,500-3,000 で購入可能です。長期保存(10 年以上)を狙う場合は、フタロシアニン系色素(青みがかった裏面)を使った高品質メディアを選ぶことを推奨します。アゾ系・シアニン系は光・熱で劣化しやすく短命です。
書込ドライブは内蔵 SATA / 外付け USB が現役で、Pioneer / ASUS / LG / Verbatim 等が継続生産しています。¥3,000-8,000 で BD-R 対応コンボドライブも入手可能で、CD-R / DVD-R / Blu-ray の互換性を 1 台で確保できます。
関連用語との違い
- CD-RW(1997): 約 1,000 回書換可能、CD-R は WORM(1 回書込のみ)。
- DVD-R / DVD+R(1997 / 2002): 4.7GB の大容量後継、CD-R 互換ドライブで読書可能。
- M-DISC(2009): 100-1000 年寿命を謳う長期保存特化版、Verbatim が継続。
- 太陽誘電 That's: 音楽用プロ向け最高品質メディア、2015 年生産終了。
よくある質問(FAQ)
Q1: なぜ太陽誘電 That's は伝説的存在ですか? A: 1988 年の CD-R 共同開発に参加した日本のメーカーで、フタロシアニン系色素の自社生産・歩留まり最高品質を継続、音楽プロエンジニア・オーディオファイルから「品質の代名詞」として絶大な信頼を得ました。2015 年生産終了は業界に衝撃を与えました。
Q2: CD-R の長期保存は本当にできますか? A: 適切な保管(常温 / 暗所 / 直射日光・湿度回避)で 30-100 年は可能です。ただし安価メディア(Princo / Mr. DATA 等)は 5-10 年で読み出し不能になる例も報告されています。
Q3: 現代の用途で CD-R を使う意味はありますか? A: 音楽マスタリング送付・政府公文書アーカイブ・医療画像保存など「物理メディアでの長期保存が法的 / 業務的に必要な用途」では今も現役です。一般用途では USB / クラウドが効率的です。
まとめ
- 1988 年 Philips/Sony 策定の WORM 型光ディスク規格
- 650MB-900MB の容量、1990 年代後半に大ヒット
- 太陽誘電 That's / 三菱 Verbatim / Imation 等が主要メーカー
- 2010 年代に DVD-R / USB / クラウドへ移行、業務用途で継続