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アブソリュートエンコーダ式ノギス(アブソリュートエンコーダシキノギス)

アブソリュートエンコーダ式ノギスは、電源オフ時やスライド移動後も絶対位置を保持するエンコーダを搭載し、電源投入後のゼロセット操作が不要なデジタルノギスである。ミツトヨのABSOLUTEシリーズが代表的。

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アブソリュートエンコーダ式ノギス(Absolute Encoder Caliper)は、本尺上の絶対位置を常に検出するエンコーダ機構を搭載したデジタルノギスである。従来のインクリメンタル方式では電源オフ時やスライド移動中に位置情報が失われるため、使用前に必ずジョーを閉じてゼロセット操作が必要だった。アブソリュート方式はこの制約を解消し、電源を入れた瞬間から正確な測定値を表示できる。

インクリメンタル方式との違い

デジタルノギスのエンコーダには大きく2方式がある:

項目インクリメンタル方式アブソリュート方式
位置検出相対変位をカウント絶対位置を直読
電源オフ時位置情報が消失位置情報を保持
電源投入後ゼロセット必須即座に測定可能
スライド検出電源オン中のみ電源オフ中も検出
電池消費測定時のみ微小な待機電流あり
コスト低やや高
代表製品廉価なノギス全般ミツトヨ ABSOLUTE シリーズ

インクリメンタル方式では、電極パターンの変化をカウント(増減)して移動量を計算するため、基準点(ゼロ点)が不明の状態では正しい位置がわからない。一方、アブソリュート方式は電極パターンそのものに絶対位置の情報が符号化されているため、任意の位置で電源を入れてもその時点の正確な位置がわかる。

アブソリュートエンコーダの動作原理

ミツトヨのABSOLUTEエンコーダは、静電容量式(キャパシタンス式)の原理を応用している:

  1. 本尺側(ステータ): 微細な電極パターンが精密にエッチングされたガラススケール。パターンは複数の周期性を持つ「アブソリュートコード」として設計
  2. 副尺側(スライダ): 送信・受信電極を備えたセンサIC。本尺の電極パターンとの間で静電容量の変化を検出
  3. 信号処理: 複数周期のパターンから粗い位置(cm単位)→ 細かい位置(0.01mm単位)を階層的に算出。これにより、任意の位置で即座に絶対位置を確定

この方式のため、電源がオフの間にスライドを動かしても、電源投入時に現在位置を正確に認識する。電池交換後もゼロセット不要。

代表的なアブソリュート方式製品

メーカーシリーズ名型番例測定範囲電池寿命価格帯
ミツトヨABSOLUTE Digimatic500-196-30 (CD-15AX)0〜150mm約3.5年 (SR44)¥8,000〜10,000
ミツトヨABSOLUTE Coolant Proof500-785 (CD-S15C)0〜150mmソーラー+SR44¥18,000〜22,000
ミツトヨABSOLUTE Digimatic500-752-20 (CD-AX)0〜200mm約3.5年 (SR44)¥12,000〜15,000
ミツトヨABSOLUTE Digimatic500-754-20 (CD-AX)0〜300mm約3.5年 (SR44)¥18,000〜22,000
MahrMarCal 16 ER41030180〜150mm約2年 (CR2032)¥25,000〜30,000
FowlerSylvac S_Cal PRO54-100-2440〜150mm約1.5年 (CR2032)¥20,000〜25,000

ミツトヨが「ABSOLUTE」の名称で広く認知されているため、「アブソリュート」がほぼミツトヨの代名詞となっているが、MahrやFowlerなど他メーカーも同等機能のモデルを展開している。

電池寿命とアブソリュート方式の関係

アブソリュート方式は待機中も微小電流(数μA)で位置保持情報を維持する設計のため、理論上はインクリメンタル方式より電池消費が多い。しかしミツトヨのABSOLUTEシリーズはSR44酸化銀電池1個で約3.5年(1日8時間使用想定)の長寿命を実現しており、実用上の差はほとんどない。

電池消費に関するポイント:

  • SR44 酸化銀電池: 電圧安定性が高く、終止電圧まで1.55Vを維持。ミツトヨ推奨
  • LR44 アルカリ電池: 安価だが電圧降下が早く、低温で性能低下。非推奨
  • CR2032 リチウム電池: 一部メーカーで採用。3V動作、約2年寿命
  • オートパワーオフ: 操作なし5〜20分で自動電源断(設定可能なモデルあり)

自作PCユーザーへのメリット

アブソリュート方式が自作PC用途で特にありがたいのは:

  • 即座に測定開始: ケース加工中にさっとノギスを取って電源オン → すぐ測定値が出る
  • ゼロセット忘れ防止: インクリメンタル方式でゼロセットを忘れると全測定値がオフセット。ABSOLUTE なら起こりえない
  • 電池交換後も安心: ゼロセットし直す手間がなく、校正も不要
  • 頻繁なオンオフ: 一時的に使って放置、また使う――というホビーユーザーの使い方にフィット

よくある質問(FAQ)

Q1: アブソリュート方式は高価? A: ミツトヨ500-196-30は¥8,000〜10,000で、廉価なインクリメンタル式(¥2,000〜4,000)の2〜3倍。ただし3.5年の電池寿命と原点保持の利便性を考えると費用対効果は高い。

Q2: インクリメンタル方式でもゼロセットすれば同じでは? A: 使用前のゼロセットを毎回忘れずに行えば同等の精度で測定可能。ただし現場では忘れたまま測定 → 誤差に気付かないリスクがあり、ABSOLUTE方式はこのヒューマンエラーを構造的に排除する。

Q3: 電池を抜いたらゼロ点はどうなる? A: ABSOLUTEエンコーダの位置情報は電極パターンの物理構造に由来するため、電池を完全に抜いても位置は失われない。新しい電池を入れれば即座に正確な値を表示する。

まとめ

  • アブソリュート方式は絶対位置検出で、電源オフ中も位置情報を保持
  • ミツトヨ ABSOLUTEシリーズがデファクトスタンダード
  • インクリメンタル方式との最大の違いはゼロセット不要の利便性
  • 電池寿命は約3.5年(SR44)で実用上十分
  • 自作PCユーザーには「即座に測定開始」のメリットが特に有用