GRPO(Group Relative Policy Optimization)(ジーアールピーオー)
グループ内サンプルの相対報酬を用いてLLMを強化学習でファインチューニングする手法。DeepSeek-R1の訓練に採用され、報酬モデルなしで推論能力を大幅に向上させた。
GRPO(Group Relative Policy Optimization)とは
GRPO(Group Relative Policy Optimization)は、LLM(大規模言語モデル)を強化学習でファインチューニングするためのアルゴリズムで、DeepSeek社が2025年初頭のDeepSeek-R1論文で採用したことにより一躍注目を集めた手法です。従来のPPO(Proximal Policy Optimization)を基盤としながら、外部の報酬モデルを不要にする設計が最大の特徴です。
GRPOの仕組み
GRPOの核心は「グループ内相対報酬」です。同一のプロンプトに対してG個(通常8〜16個)の応答をサンプリングし、それぞれの品質をグループ内で相対比較することでベースラインを推定します。
学習ステップの概要:
- サンプリング — 同一プロンプトからG個の応答を生成
- 報酬計算 — ルールベースまたは検証可能な報酬関数で各応答をスコアリング
- 相対化 — グループ平均を引いてアドバンテージを計算(バリュー関数不要)
- 方策更新 — PPOクリッピング目標で勾配更新
- KL正則化 — 参照モデルからの逸脱を抑制
この設計により、PPOで必要だったバリューネットワーク(Critic)の訓練が不要になり、メモリ効率と実装の単純さが大幅に改善されます。
PPOとの違い
PPOではCriticネットワークがバリュー関数を学習しベースラインを推定しますが、GRPOではグループ内の報酬平均がベースラインを代替します。この違いによりGRPOはCriticモデルのメモリと計算コストを完全に排除できます。報酬モデルも不要なため、訓練に必要なモデルはActorと参照モデルの2つのみとなり、PPOの4モデル構成(Actor・Critic・Ref・Reward)から大幅に削減されます。
DeepSeek-R1における成果
DeepSeek-R1はGRPOを採用し、数学(AIME 2024: 79.8%)・コーディング(Codeforces: 96.3パーセンタイル)・論理推論分野でOpenAI o1と同等以上の性能を達成しました。特筆すべきは、GRPOによって「思考チェーン(Chain-of-Thought)」が自発的に出現したことです。モデルは明示的に指示されなくても、長い推論ステップを生成するようになりました。
適用される報酬関数の種類
GRPOで使用される報酬関数は主に以下の3種類です:
- ルールベース報酬 — 数学問題の正誤判定、コードの実行結果検証など
- 形式報酬 — 出力が指定フォーマット(JSON、Markdown等)に従っているか
- プロセス報酬 — 途中ステップの正しさを評価するPRM(Process Reward Model)
これらの「検証可能な報酬」はスカラー値を確定的に返せるため、GRPOと特に相性が良いです。
GRPOの派生と後継手法
GRPOの成功を受けて、複数の改良手法が提案されています:
- DAPO(Decoupled Alignment Policy Optimization)— Alibaba/QwenチームによるGRPO改良版。クリッピング非対称化とトークンレベル損失正規化を導入
- REINFORCE++ — 分散削減を強化したシンプルなバリアント
- Dr. GRPO — グループサイズ依存性を除去し安定性を向上
- VAPO(Value-based Augmented Policy Optimization)— バリュー関数を部分的に再導入
実装フレームワーク
GRPOは以下のオープンソースフレームワークで実装されています:
- veRL(Volcano Engine RL)— ByteDanceによる大規模分散訓練対応
- OpenRLHF — 最もポピュラーなオープンソース実装
- TRL(Hugging Face)— GRPOTrainerクラスを内蔵
- LlamaFactory — WebUIで設定可能なGRPOファインチューニング
まとめ
GRPOは「報酬モデルなしでもLLMをRLでファインチューニングできる」ことを実証した画期的な手法です。DeepSeek-R1での実績により、推論能力強化のためのポストトレーニング手法として2025年の主流となっており、数学・コーディング・科学分野でのLLM性能向上に広く活用されています。