veRL(Volcano Engine Reinforcement Learning)(ブイイーアールエル)
ByteDanceが開発したLLMの強化学習訓練フレームワーク。大規模分散環境でのGRPO・PPO等のRL訓練を効率化し、柔軟なモデル並列・データ並列構成でスループットを最大化する。
veRL(Volcano Engine Reinforcement Learning)とは
veRL(Volcano Engine Reinforcement Learning)は、ByteDanceがVolcano Engine(火山エンジン)クラウドプラットフォーム向けに開発し、2025年にオープンソース公開したLLM強化学習訓練フレームワークです。GRPOやPPOなどのRL手法を使って数十億〜数千億パラメータのLLMをポストトレーニングするための、分散訓練インフラを提供します。
veRLが解決する課題
LLMの強化学習訓練は通常のSFT(Supervised Fine-Tuning)と異なる複雑さを持ちます:
- マルチモデル管理 — 訓練中に参照モデル・アクターモデル・クリティックモデルを同時に管理
- 非同期生成 — 応答サンプリング(推論)と方策更新(訓練)を効率的に交互実行
- メモリ管理 — アクティベーション・KVキャッシュ・勾配が同時にメモリを消費
- スケーラビリティ — 数百GPU規模での線形スケーリング
veRLはこれらをHybrid Parallel設計で解決します。
veRLのアーキテクチャ
Hybrid Parallel Engine(HPE)がveRLの核心で、訓練フェーズと生成フェーズで異なる並列戦略を動的に切り替えます:
訓練フェーズ(Megatron-LMバックエンド)ではテンソル並列(TP)で行列演算を複数GPU分割し、パイプライン並列(PP)でレイヤーを複数ノードに分散、データ並列(DP)でミニバッチを複数レプリカで処理します。生成フェーズ(vLLMバックエンド)ではPagedAttentionで高スループット推論を行い、Continuous Batchingで効率的なサンプリングを実現します。
Worker設計: veRLは以下のWorkerを疎結合で管理します:
- ActorWorker — 方策モデルを保持し訓練と推論を担当
- CriticWorker — PPO用のバリュー関数モデル
- ReferenceWorker — KLペナルティ計算用の参照モデル(固定)
- RewardWorker — 報酬関数の計算(カスタム拡張可能)
サポートするRLアルゴリズム
GRPOは報酬モデル不要でグループ相対報酬を使用します。PPOは標準的なCritic付きRLです。REINFORCEはシンプルなポリシーグラジェントで、ReMaxはPPOの軽量版です。
パフォーマンス特性
公式ベンチマーク(8×A100 80GB)での実測値:
- Llama-3-8B + GRPO: 約2,000 tokens/sec/GPU
- Qwen2.5-72B + GRPO: 約400 tokens/sec/GPU(16ノード)
- メモリ効率: Actorのみ保持で参照モデルオフロード時 約30%削減
OpenRLHFとの使い分け
OpenRLHFはDeepSpeed/FSDPバックエンドとDP+ZeROを採用し7B〜70B規模を対象に使いやすさを重視します。一方veRLはMegatron-LM+vLLMでTP+PP+DP Hybridを採用し70B〜数百B規模を対象に大規模クラスタ最適化を重視します。どちらもApache 2.0ライセンスです。
まとめ
veRLはGRPOやPPOを使って大規模LLMをポストトレーニングするためのプロダクション品質のフレームワークです。ByteDanceの実運用ワークロードから生まれた設計で、特に70B以上のモデルへのRLを大規模クラスタで実行したい研究者・エンジニアにとって最有力の選択肢の一つです。