Kimi k1.5(キミケーイチテンゴ)
MoonshotAIが2025年1月に公開した推論モデル。長いコンテキスト強化学習(Long-CoT RL)により、テキストと画像の両方で推論を実行。GPT-4oをMATH-500で上回る性能を公開時に発表。
Kimi k1.5 — Long-CoT RLによるマルチモーダル推論モデル
Kimi k1.5は中国のAI企業MoonshotAI(月之暗面)が2025年1月22日に公開した推論特化モデル。技術報告書「Kimi k1.5: Scaling Reinforcement Learning with LLMs」を同時公開し、DeepSeek R1と同時期に推論モデル競争を加速させた。
MoonshotAIとKimiの背景
MoonshotAIは2023年3月設立の中国スタートアップ。Kimi(Kimi Chat)は同社のコンシューマー向けチャットサービスで、中国語圏で人気を博している。k1.5は「思考する(Thinking)」能力を持つ最初のKimiモデル。
Long-CoT強化学習の技術
k1.5の核心技術はLong Context Scaling(長文コンテキストスケーリング)。通常の強化学習では数百〜数千トークンのCoTを生成するが、k1.5は128Kトークンという極めて長い思考チェーンを強化学習で訓練した。
訓練の革新点:
- 長い思考ステップに高い報酬を与えることで、モデルが自発的に深く考えるようになる
- プロセス報酬モデル(PRM)ではなく、最終出力の正誤のみを報酬とするシンプルなORM
- コードインタープリタ等のツール使用と推論を統合
Short-CoT蒸留
長いCoTは精度が高いが、レイテンシとコストが大きい問題がある。k1.5はLong-CoTモデルからShort-CoTモデルに知識を蒸留:
| モード | 思考長 | 速度 | 精度 |
|---|---|---|---|
| Long-CoT | 数万tokens | 低速 | 最高 |
| Short-CoT | 数百tokens | 高速 | 高(GPT-4o比優位) |
Short-CoT版はGPT-4oをMATH-500(96.2% vs 74.6%)で大幅に上回るとされる。
マルチモーダル推論
k1.5はテキストだけでなく画像入力も処理できる推論モデル。数式が含まれた画像、グラフの読み取り、幾何学問題の図形認識などで推論能力を発揮する。Mathvista(視覚的数学推論)でo1(73.9%)に迫る74.9%を報告。
ベンチマーク(技術報告書より)
| ベンチマーク | Kimi k1.5 Long-CoT | GPT-4o | o1 |
|---|---|---|---|
| AIME 2024 | 77.5% | 13.4% | 74.4% |
| MATH-500 | 96.2% | 74.6% | 96.4% |
| LiveCodeBench | 47.3% | 32.9% | 43.3% |
| MathVista | 74.9% | 63.8% | 73.9% |
独立した第三者による再現が限られており、公式数値は参考値として扱う必要がある。
利用方法
k1.5はKimi Chat(kimi.ai)経由での利用が主。APIは中国国内向けに提供されており、グローバルAPIは制限あり(2025年6月時点)。オープンソース版は未公開で、DeepSeek R1やQwQのような自己ホスト実行は現時点では不可。
推論モデル時代の文脈
k1.5・DeepSeek R1・o3-miniはほぼ同時期(2025年1月)に公開された。この「推論モデル競争2025年1月」は、スケーリング則から強化学習への重心移動を象徴するターニングポイントとして位置づけられている。
まとめ
Kimi k1.5はマルチモーダル推論と長文CoTの組み合わせで注目を集めたモデル。オープンソースではないため直接利用は限られるが、Long-CoT RLという訓練手法の技術的知見が公開されており、推論モデル研究の重要な参照点となっている。