モバイルバッテリー容量表記(mAh/Wh換算)(モバイルバッテリーヨウリョウヒョウキ)
モバイルバッテリーの容量を示すmAh(ミリアンペアアワー)とWh(ワットアワー)の2つの単位の意味と換算方法。mAhはセル電圧3.7V基準、Whは実エネルギー量を表す。
モバイルバッテリー容量表記とは
モバイルバッテリーの容量表記には主に2つの単位が使われる。mAh(ミリアンペアアワー)はセル電圧3.7V基準の電荷量で、パッケージ表記で最もよく見かける。Wh(ワットアワー)は電圧非依存の絶対的なエネルギー量で、航空機持ち込み制限や異なる電圧デバイス間の比較に使われる。両者の関係を正しく理解することで、実際にデバイスを何回充電できるかを正確に見積もれる。
mAh と Wh の定義
mAh(ミリアンペアアワー)
電荷量の単位。1,000mAh = 1Ah(アンペアアワー)。「1時間に1,000mA(1A)の電流を供給できる容量」を意味する。ただしこの値はセル電圧(通常3.7V)基準であり、USB出力電圧(5V/9V/20V)に変換すると実際に取り出せる電荷量は減少する。
Wh(ワットアワー)
エネルギー量の単位。電圧に依存しない絶対的な値。「1時間に1W(ワット)の電力を供給できるエネルギー」を意味する。
換算式
Wh = mAh × セル電圧(V) ÷ 1000
Wh = mAh × 3.7 ÷ 1000 (リチウムイオン電池の場合)
例: 10,000mAh × 3.7V ÷ 1000 = 37Wh
なぜ mAh 表記は「盛られている」のか
消費者が最もよく見るmAh表記は、セル電圧3.7V基準の値である。しかし実際のUSB出力は5V以上であり、電圧変換のロス(変換効率70〜90%)も加わるため、デバイスに届く実効容量は公称値より大幅に少ない。
実効容量の計算
実効mAh = 公称mAh × セル電圧(3.7V) ÷ 出力電圧(V) × 変換効率
| 公称容量 | 5V出力時の実効容量 | 9V出力時 | 20V出力時 |
|---|---|---|---|
| 10,000mAh | 5,180mAh (効率70%) | 2,877mAh (効率70%) | 1,295mAh (効率70%) |
| 20,000mAh | 10,360mAh | 5,754mAh | 2,590mAh |
| 30,000mAh | 15,540mAh | 8,633mAh | 3,885mAh |
デバイス充電回数の計算
充電回数 = バッテリー実効容量(Wh) ÷ デバイスバッテリー容量(Wh)
| デバイス | バッテリー容量 | 10,000mAh(37Wh)で | 20,000mAh(74Wh)で |
|---|---|---|---|
| iPhone 16 Pro | 3,582mAh (13.8Wh) | 約1.9回 | 約3.8回 |
| iPhone 16 Pro Max | 4,685mAh (18.1Wh) | 約1.4回 | 約2.9回 |
| Galaxy S25 Ultra | 5,000mAh (19.3Wh) | 約1.3回 | 約2.7回 |
| iPad Air M3 | 28.93Wh | 約0.9回 | 約1.8回 |
| MacBook Air M4 | 52.6Wh | 約0.5回 | 約1.0回 |
| Nintendo Switch OLED | 4,310mAh (16Wh) | 約1.6回 | 約3.3回 |
※ 変換効率70%を想定した概算
航空機持ち込み制限
IATA(国際航空運送協会)の規定に基づく制限:
| Wh | mAh換算(3.7V) | 持ち込み | 預け入れ |
|---|---|---|---|
| 100Wh以下 | 約27,027mAh以下 | OK(申告不要) | 不可 |
| 100〜160Wh | 約27,027〜43,243mAh | OK(申告+2個まで) | 不可 |
| 160Wh超 | 約43,243mAh超 | 不可 | 不可 |
重要: Wh表記のないモバイルバッテリーは搭乗拒否される場合がある。2024年以降、多くの航空会社がWh表示を義務化している。
よくある容量表記の誤解
誤解1: 「20,000mAhならiPhoneを5回充電できる」
iPhone 16 Proのバッテリーは3,582mAh。20,000 ÷ 3,582 = 5.6回と計算しがちだが、電圧変換ロスを考慮すると実際は3.5〜4回程度。
誤解2: 「大容量ほど良い」
30,000mAhのバッテリーは重量600〜700g。毎日持ち歩くスマホ充電用なら10,000mAh(200g前後)で十分。容量と携帯性のトレードオフを考慮する必要がある。
誤解3: 「mAhが同じなら性能も同じ」
同じ10,000mAhでも、出力が10Wと30Wでは充電速度が3倍異なる。容量だけでなく最大出力W数を必ず確認する。
Wh基準での製品比較
| 製品 | 公称mAh | 実測Wh | 実効率 | 価格/Wh |
|---|---|---|---|---|
| Anker 733 Power Bank | 10,000 | 36.2 | 97.8% | ¥166 |
| CIO SMARTCOBY Pro | 10,000 | 35.8 | 96.8% | ¥111 |
| Anker Prime | 27,650 | 98.9 | 96.7% | ¥202 |
| UGREEN 20000 | 20,000 | 72.5 | 97.9% | ¥89 |
| Baseus Blade 2 | 12,000 | 43.8 | 98.6% | ¥159 |
※ 実効率 = 実測Wh ÷ 理論Wh(mAh×3.7V) × 100
よくある質問(FAQ)
Q1: mAhとWhのどちらを基準に選ぶべき? A: Whを基準にするのが正確。特にノートPC充電ではWh表記が重要で、MacBook Air M4(52.6Wh)をフル充電するには最低60Wh以上のバッテリーが必要。mAh表記しかない製品は mAh × 3.7 ÷ 1000 でWh換算して比較する。
Q2: セル電圧3.7Vはなぜ固定値なのか? A: リチウムイオン/リチウムポリマー電池の公称電圧が3.7V(満充電4.2V、放電終止3.0V)であるため。一部の製品は3.85Vのハイボルテージセルを使用しており、同じmAhでもWhが若干大きくなる。
Q3: 容量が表記と違う場合、不良品? A: 必ずしも不良品ではない。mAh表記はセル電圧基準であり、5V出力時の実効容量が公称の60〜75%になるのは正常。ただし実測Whが理論Whの90%を大きく下回る場合はセル品質の問題がある可能性がある。
まとめ
- mAhはセル電圧3.7V基準の電荷量、Whは絶対的なエネルギー量
- 実効容量は公称mAhの60〜75%程度(電圧変換ロスのため)
- 航空機持ち込みは100Wh以下(約27,000mAh)が申告不要の基準
- 購入時はmAhだけでなく、出力W数とWh値を確認する
- デバイス充電回数はWh基準で計算するのが正確