サーマルグリス(熱伝導グリス)(サーマルグリス)
サーマルグリス(Thermal Paste / Thermal Compound)は、CPUやGPUのダイとヒートシンク・クーラーの間に塗布する熱伝導性ペースト。微細な凹凸を埋めて密着性を高め、熱抵抗を低減することで冷却効率を最大化する。シリコン系・セラミック系・金属系・液体金属系など素材によって熱伝導率(W/mK)が異なり、自作PCの温度管理における必須アイテムである。
サーマルグリスとは
サーマルグリス(Thermal Paste / Thermal Compound / TIM: Thermal Interface Material)は、CPUやGPUのヒートスプレッダ(IHS)とCPUクーラーのベースプレートの間に塗布する熱伝導性のペースト状素材である。金属同士を直接密着させても、表面の微細な凹凸によって実際の接触面積は見かけの30〜50%程度にとどまり、残りは熱伝導率0.025 W/mKの空気層となる。サーマルグリスはこの隙間を熱伝導率1〜14 W/mKの素材で埋めることで、熱抵抗を劇的に低減する役割を果たす。
サーマルグリスの種類と特徴
サーマルグリスは主に4つのカテゴリに分類される。
シリコン系(シリコーングリス)
最も安価で一般的なタイプ。熱伝導率は1〜3 W/mK程度で性能は控えめだが、絶縁性に優れ取り扱いが容易。Intel・AMDのリテールクーラーにプリアプライされているグリスの多くがこのタイプ。代表製品にArctic MX-4(旧世代)やSilverStone SST-TC04がある。
セラミック系(酸化アルミニウム・酸化亜鉛配合)
シリコンベースに酸化アルミニウム(Al₂O₃)や酸化亜鉛(ZnO)の微粒子を配合したタイプ。熱伝導率3〜8 W/mKで、コストパフォーマンスに優れる。非導電性のため基板への漏出リスクが低い。Noctua NT-H1(3.5 W/mK)やArctic MX-6(5.0 W/mK)が代表格。
金属系(銀・アルミニウム微粒子配合)
シリコンベースに銀(Ag)やアルミニウム(Al)の微粒子を混合したハイエンドタイプ。熱伝導率は8〜14 W/mK。Thermal Grizzly Kryonaut(12.5 W/mK)やGELID GC-Extreme(8.5 W/mK)が人気。微弱な導電性を持つ製品もあるため、はみ出しに注意が必要。
液体金属(ガリウム合金)
ガリウム・インジウム・スズの合金で、熱伝導率73〜80 W/mK。通常グリスの10倍以上の性能を持つが、導電性が高くアルミニウムを腐食するため、上級者向け。Thermal Grizzly Conductonaut(73 W/mK)やCooler Master CryoFuze Violet(液体金属パッド)が代表。
| 種類 | 熱伝導率 (W/mK) | 導電性 | 価格帯 | 難易度 | 代表製品 |
|---|---|---|---|---|---|
| シリコン系 | 1〜3 | なし | ¥300〜800 | 初心者向け | SilverStone SST-TC04 |
| セラミック系 | 3〜8 | なし | ¥600〜1,500 | 初心者〜中級 | Noctua NT-H1, Arctic MX-6 |
| 金属系 | 8〜14 | 微弱 | ¥800〜2,500 | 中級〜上級 | Thermal Grizzly Kryonaut, GELID GC-Extreme |
| 液体金属 | 73〜80 | あり | ¥1,500〜3,500 | 上級者向け | Thermal Grizzly Conductonaut |
人気製品の詳細比較
2025〜2026年の自作PC市場で特に評価の高い製品を比較する。
| 製品名 | 熱伝導率 | 容量 | 実売価格 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Noctua NT-H1 | 3.5 W/mK | 3.5g | ¥900 | 塗りやすさと信頼性のバランスが最高。初心者に最推奨 |
| Noctua NT-H2 | 5.0 W/mK | 3.5g | ¥1,200 | NT-H1の後継。低粘度で伸びが良く、性能向上 |
| Arctic MX-6 | 5.0 W/mK | 4g | ¥800 | コスパ最強。2g版は¥500前後で入手可能 |
| Thermal Grizzly Kryonaut | 12.5 W/mK | 1g | ¥1,200 | ハイエンド空冷・簡易水冷に最適。OC勢定番 |
| Thermalright TFX | 14.3 W/mK | 2g | ¥1,800 | 最高クラスの熱伝導率。やや硬めで塗布にコツが要る |
| GELID GC-Extreme | 8.5 W/mK | 3.5g | ¥1,100 | バランス型ハイエンド。経年劣化しにくい |
選び方のポイント
用途別おすすめ
- 初めての自作PC: Noctua NT-H1 または Arctic MX-6。失敗しにくく十分な性能
- ゲーミングPC(空冷): Noctua NT-H2 または GELID GC-Extreme
- ハイエンド水冷・OC用途: Thermal Grizzly Kryonaut または Thermalright TFX
- ノートPC殻割り: Thermal Grizzly Conductonaut(液体金属)
- 大量塗布(業務用): Arctic MX-6 20g チューブ
購入時の注意点
- 使用期限を確認する(未開封でも2〜3年が目安)
- 容量は一般的に1〜2回分が1g。3.5g以上なら複数回使える
- 付属のヘラやクリーニングワイプの有無をチェック
- Amazon等でのレビュー評価よりも、実測データのあるレビューサイトを参照する
よくある質問(FAQ)
Q1: サーマルグリスを塗らないとどうなりますか? A: CPUとクーラーの間に空気層ができ、熱伝導効率が大幅に低下する。アイドル時でも10〜20°C、高負荷時は30°C以上温度が上昇し、サーマルスロットリングやシャットダウンの原因となる。必ず塗布すること。
Q2: 高いグリスと安いグリスでどのくらい温度差がありますか? A: 一般的なセラミック系(3〜5 W/mK)とハイエンド金属系(12〜14 W/mK)の差は、高負荷時で3〜7°C程度。日常用途ではセラミック系で十分だが、オーバークロックや高TDP CPU(Core i9-14900K: 253W / Ryzen 9 9950X: 170W)では上位グリスの恩恵が大きい。
Q3: グリスの塗り替え頻度はどのくらいですか? A: 一般的には2〜3年に1回が目安。ただし、温度が購入時より5°C以上上昇した場合は塗り替えを検討する。液体金属は5年以上持続するが、アルミ製ヒートシンクには使用不可。
Q4: CPUクーラーに最初から塗られているグリスはそのまま使えますか? A: はい、プリアプライ(事前塗布)グリスはそのまま使用可能。Noctua製クーラーのプリアプライはNT-H1相当品で品質も良い。ただし、一度取り外して再装着する場合は必ず塗り直す。
まとめ
- サーマルグリスはCPU/GPU冷却の必須アイテムで、種類によって熱伝導率が1〜80 W/mKと大きく異なる
- 初心者にはNoctua NT-H1やArctic MX-6がコスパ・扱いやすさで最適
- ハイエンド用途ではThermal Grizzly KryonautやThermalright TFXが定番
- 液体金属は圧倒的な性能だが導電性・腐食リスクから上級者向け
- 2〜3年ごとの塗り替えで長期的な冷却性能を維持できる