サーマルグリスの塗布方法(サーマルグリスノトフホウホウ)
サーマルグリスの塗布方法は、CPUダイ(IHS)のサイズや形状、グリスの粘度によって最適な手法が異なる。代表的な方法として点置き(センタードット)・X字・スプレッド(全面塗り)・ステンシル法がある。適切な塗布量と均一な分布が冷却性能を左右し、多すぎても少なすぎても温度上昇の原因となる。
サーマルグリスの塗布方法とは
サーマルグリスの塗布は自作PCの組み立てにおいて最も重要な工程のひとつである。塗布の品質がCPU温度に直結し、最大で10°C以上の差が生じることもある。ここでは主要な4つの塗布方法と、CPUサイズ別の推奨アプローチを解説する。
主要な塗布方法
1. センタードット法(点置き)
CPUのIHS(ヒートスプレッダ)中央に米粒〜小豆大のグリスを1点置き、クーラーの圧着力で自然に広げる方法。最も簡単で初心者向け。Intel LGA1700(37.5×45mm)やAM5(40×40mm)の標準サイズCPUに最適。
手順:
- IHS表面をイソプロピルアルコール(IPA 90%以上)とマイクロファイバークロスで清掃
- チューブからIHS中央に直径4〜5mm程度のドットを置く
- クーラーを真上から均等に押し付け、対角線順でネジを締める
- 締め付けトルクは均一に(手回しで「止まるまで + 1/4回転」が目安)
2. X字法
IHS上にX字を描くように塗布する方法。長方形のIHS(Intel LGA1700のように縦長)で特に有効。中央部だけでなく四隅にもグリスが行き渡りやすい。Ryzen 7000シリーズ(AM5)のような正方形ダイでも効果的。
3. スプレッド法(全面塗り)
ヘラやカード、指(ゴム手袋着用)を使ってIHS全面に薄く均一に塗り広げる方法。確実にカバレッジを確保できるが、均一な厚さにするのが難しく、気泡が入るリスクがある。大型IHS(Threadripper: 72×54mm)向き。
4. ステンシル法
Thermal Grizzly Kryonautに付属するステンシルガイドを使い、一定量を均一に塗布する方法。安定した結果が得られるが、専用アクセサリが必要。
| 塗布方法 | 難易度 | 推奨CPU | カバレッジ | 気泡リスク |
|---|---|---|---|---|
| センタードット | ★☆☆ | LGA1700, AM5 | 80〜95% | 低 |
| X字 | ★☆☆ | LGA1700(縦長) | 85〜98% | 低 |
| スプレッド | ★★☆ | Threadripper, EPYC | 95〜100% | 中 |
| ステンシル | ★★☆ | 全サイズ | 90〜98% | 低 |
CPUサイズ別の推奨方法
2025〜2026年の主要CPUプラットフォーム別に最適な塗布方法を示す。
| プラットフォーム | IHSサイズ | ダイ構成 | 推奨方法 | グリス量目安 |
|---|---|---|---|---|
| Intel LGA1700 (12〜14世代) | 37.5×45mm | 1ダイ | X字 or センタードット | 米粒〜小豆大 |
| Intel LGA1851 (Arrow Lake) | 37.5×45mm | タイル型 | X字 | 小豆大 |
| AMD AM5 (Ryzen 7000/9000) | 40×40mm | 1〜2 CCD | センタードット or X字 | 米粒大 |
| AMD sTR5 (Threadripper) | 72×54mm | 4 CCD | スプレッド | 枝豆2粒大 |
塗布時の注意点
- 量は「少なめ」からスタート: 多すぎるとクーラー装着時にはみ出し、基板やソケットを汚す原因に。少なすぎるよりは多い方がマシだが、適量は「IHS面積の70%以上をカバーする最小量」
- 再塗布時は必ず旧グリスを除去: IPA(イソプロピルアルコール)90%以上 + リントフリークロスで清掃。Thermal Grizzly TG-Remove等の専用クリーナーも有効
- クーラー側にもプリアプライがある場合は除去判断: Noctua製クーラーのプリアプライは高品質なのでそのまま使用可。安価なクーラーのプリアプライは除去して高性能グリスに交換推奨
- 室温が低すぎると粘度が上がる: 冬場の寒い部屋ではグリスが硬くなり塗りにくい。チューブを手で温めてから使用する
よくある質問(FAQ)
Q1: 初心者はどの塗布方法を選べばいいですか? A: センタードット法が最も簡単で失敗しにくい。IHS中央に米粒大のグリスを置き、クーラーを載せるだけ。LGA1700やAM5の一般的なCPUならこれで十分なカバレッジが得られる。
Q2: グリスを塗りすぎた場合はどうなりますか? A: クーラー装着時に余剰グリスがIHSの外にはみ出す。セラミック系は非導電性なので基板への被害は少ないが、金属系は短絡リスクがある。はみ出した場合はIPAで拭き取る。温度への悪影響は1〜2°C程度で、塗りすぎより塗り足りない方が問題。
Q3: ダイレクトタッチ方式のクーラーにグリスは必要ですか? A: はい、必要。ダイレクトタッチヒートパイプ(DHT)方式はヒートパイプとIHSが直接接触するが、ヒートパイプ間の溝があるため通常のクーラー以上にグリスが重要。溝を埋めるためやや多めに塗布する。
まとめ
- 初心者はセンタードット法で米粒大を置くだけでOK
- LGA1700の縦長IHSにはX字法が効果的
- Threadripper等の大型CPUにはスプレッド法を使用
- 旧グリスの除去にはIPA 90%以上を使用し、必ず清掃してから再塗布
- 塗りすぎより塗り足りない方が温度への悪影響が大きい