マイクロカプセル内の帯電粒子を電界で移動させ、紙のような表示を実現する反射型ディスプレイ技術。電力は画面書き換え時のみ消費し、表示保持に電力不要という特徴を持つ。
E-Ink(電子インク)ディスプレイは、米E Ink Corporation が開発したマイクロカプセル型電気泳動ディスプレイ(EPD)技術である。各画素に封入されたマイクロカプセル内部に、白い酸化チタン粒子と黒いカーボン粒子が透明液体とともに充填されており、電界の方向を切り替えることで粒子が上下に移動し、白または黒の表示を生成する。
この技術の最大の特徴は**双安定性(bistability)**にある。一度画面を書き換えると、電力を完全に遮断しても表示がそのまま維持される。LCD や OLED が常時バックライトや自発光で電力を消費し続けるのに対し、E-Ink はページめくり操作時のみ数ミリ秒の電力パルスを必要とするだけで、待機時の消費電力は事実上ゼロである。
初代 E-Ink(Vizplex 以降)は直径約 40μm のマイクロカプセルを使用する。カプセル内の白粒子は正に帯電し、黒粒子は負に帯電している。TFT 基板上の各画素電極に正電圧を印加すると黒粒子が表面に集まり黒く見え、負電圧では白粒子が表面に来て白く見える。中間電圧を利用すれば 16 階調のグレースケール表示が可能である。
| 世代 | 名称 | 解像度目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 第1世代 | Vizplex | 167ppi | 初の商用 E-Ink パネル |
| 第2世代 | Pearl | 212ppi | コントラスト比 10:1 達成 |
| 第3世代 | Carta | 300ppi | コントラスト比 15:1、応答速度改善 |
| 第4世代 | Carta 1200 | 300ppi | 書き換え速度 20% 向上、暗部表現改善 |
| 第5世代 | Carta 1300 | 300ppi | Gallery 4100 カラー対応、高速部分更新 |
カラー化には Kaleido(カラーフィルタ方式)と Gallery(ACEP: Advanced Color ePaper)の2系統がある。Kaleido はモノクロパネル上に RGB カラーフィルタを重ねる簡易方式で、カラー解像度はモノクロの 1/4 に低下する。Gallery は各画素に4色の粒子(CMYW)を封入し、電圧波形で各粒子の位置を制御するフルカラー方式で、書き換えに数秒かかるが解像度低下がない。
E-Ink ディスプレイは以下の分野で広く採用されている。
| 項目 | E-Ink | LCD | OLED |
|---|---|---|---|
| 消費電力 | 極低(書き換え時のみ) | 中(バックライト常時) | 低〜中(自発光) |
| 直射日光下 | 非常に良好 | 反射で見づらい | 反射で見づらい |
| 応答速度 | 遅い(120-450ms) | 速い(5-15ms) | 非常に速い(0.1ms) |
| カラー | 限定的(4096色程度) | フルカラー | フルカラー |
| 目の疲労 | 少ない | 多い | やや多い |
| 動画再生 | 不向き | 良好 |
E-Ink は反射型ディスプレイであり、バックライトを使わず外光を反射して表示する。紙と同じ原理で光が目に届くため、自発光型ディスプレイに比べてブルーライトの放出がなく、長時間の読書でも目の疲労が少ない。
「フルリフレッシュ」と呼ばれる動作で、残像(ゴースト)を防ぐために全画素を一度黒→白にリセットしてから新しい画像を描画する。部分更新モードではこのちらつきを抑えられるが、数ページごとにフルリフレッシュが必要になる。
Gallery 4100(第3世代 ACEP)は 4096 色表示・300ppi を実現し、漫画やカラー図版の閲覧に十分な品質を達成している。ただし書き換えに 1.5-3 秒かかるため、頻繁な画面更新が必要な用途には向かない。電子書籍や電子ノートでの静止画表示が主な活用場面である。
| 非常に良好 |