E-Inkディスプレイの画面書き換え速度を示す指標。フルリフレッシュ(全画素リセット+再描画)と部分更新(変更領域のみ再描画)の2種類があり、残像(ゴースト)と表示速度のトレードオフを制御する。
E-Inkリフレッシュレートは、電子ペーパーディスプレイの画面書き換えにかかる時間と頻度を表す技術指標である。LCD/OLED が 60-240Hz で連続的にフレームを更新するのに対し、E-Ink はイベント駆動型の更新を行い、ユーザー操作(ページめくり、メニュー選択)時のみ画面を書き換える。
この根本的な違いは E-Ink の双安定性に由来する。表示保持に電力が不要なため、「毎秒何回画面を更新するか」ではなく「1回の書き換えに何ミリ秒かかるか」が実用上の性能指標となる。
E-Ink コントローラは複数の更新モード(Waveform Mode)を使い分けることで、品質と速度のバランスを調整する。
全画素を一度黒に塗りつぶしてから新しい画像を 16 階調で描画する。残像が完全に除去されるため最高画質だが、画面全体が一瞬点滅(フラッシュ)する。所要時間は Carta 1200 パネルで約 450ms、Carta 1300 で約 350ms である。
白黒 2 階調のみの高速更新で、所要時間は約 120ms。テキスト入力やメニュー操作など、グレースケール表現が不要な場面で使用される。
DU をさらに簡略化した最速モードで、約 80-100ms の応答が可能。手書きペン入力のリアルタイム追従に使われるが、コントラストが低下し、残像も蓄積しやすい。
変更された領域のみを 16 階調で再描画する。フラッシュなしで画面を更新できるが、数回ごとにフルリフレッシュを挟まないと残像が蓄積する。所要時間は GC16 と同程度だが、更新面積が小さければ体感速度は速い。
E Ink が開発した残像低減アルゴリズムで、GL16 の改良版にあたる。周辺画素の影響を補正することで、フルリフレッシュなしでも残像を大幅に抑制する。Kindle Paperwhite(第11世代以降)などで採用されている。
| パネル世代 | GC16 | DU | A2 | フルリフレッシュ間隔目安 |
|---|---|---|---|---|
| Pearl | 780ms | 250ms | 150ms | 毎ページ |
| Carta | 450ms | 150ms | 100ms | 5-10ページ |
| Carta 1200 | 400ms | 120ms | 80ms | 10-20ページ |
| Carta 1300 | 350ms | 100ms | 70ms | 15-30ページ |
E-Ink の残像は、前の画面の痕跡が次の画面に薄く残る現象である。部分更新を繰り返すと粒子の位置がリセットされないまま蓄積し、コントラストが低下していく。これを解消するために定期的なフルリフレッシュが必要となる。
残像の程度は温度にも依存する。低温環境(10℃以下)では粒子の流動性が下がり、残像が出やすくなる。高温では逆に粒子が動きやすくなり、残像は少ないがコントラストがやや低下する。多くの E-Ink コントローラは温度センサーを内蔵し、環境温度に応じて駆動波形を自動調整する。
E Ink が開発したサイネージ向け高速駆動技術で、白黒表示に特化することで最大 11fps のアニメーション表示を実現する。バス停の到着案内など、限定的な動的コンテンツに活用される。
機械学習を用いて画素遷移ごとの最適な電圧パルスパターンを算出する技術。従来のルックアップテーブル方式より細かい制御が可能で、残像を抑えながら更新速度を向上させる。
E Ink Corporation は毎年応答速度を改善しており、Carta 1300 世代では初代比で約 50% の高速化を達成している。ただし物理的な粒子移動に依存する原理上、LCD/OLED 並みの応答速度(数ミリ秒)は困難であり、専用の高速駆動モード(DES など)で特定用途に最適化する方向で進化している。
通常の読書では部分更新(GL16/REAGL)を使い、ページめくり時のちらつきを抑える。10-20ページごと、またはメニュー画面遷移時にフルリフレッシュ(GC16)を挟んで残像を除去する。端末の設定で「ページ更新」の頻度を変更できる機種が多い。
手書き入力は A2 モードを使い、ペン先周辺の限られた領域のみを白黒 2 階調で超高速更新する。全画面ではなくペンの軌跡周辺だけを処理するため、体感遅延は 20-30ms 程度に抑えられ、紙に書くような書き心地を実現している。