ネットワーク
上級

BGP (Border Gateway Protocol・1989 RFC 1105)(ビージーピー)

インターネットの根幹を支える、自律システム(AS)間で経路情報を交換するためのルーティングプロトコル。パスベクトルアルゴリズムを用い、グローバルなネットワーク間の最適な通信経路を決定・管理する役割を担う。

0 回閲覧
0 いいね
2026/5/18 更新
関連タグ
BGP (Border Gateway Protocol・1989 RFC 1105)

概要

BGP(Border Gateway Protocol)は、インターネットという巨大なネットワークの集合体において、異なる組織が管理する「自律システム(AS: Autonomous System)」同士を接続するための標準的なプロトコルです。インターネットは単一の巨大なネットワークではなく、ISPや大学、大企業などが運営する無数のASが相互に接続されて構成されています。

BGPは「パスベクトル型」と呼ばれるアルゴリズムを採用しており、宛先までの経路(ASのリスト)を保持することで、ループ(経路の循環)を防ぎつつ、ポリシーに基づいた柔軟な経路選択を実現します。単なる最短距離の計算ではなく、「どのASを経由したくないか」「どの接続先を優先するか」といった運用者の意図(ルーティングポリシー)を反映できる点が最大の特徴です。

主要なパス属性(Path Attributes)

BGPの意思決定プロセスは、以下の属性値に基づいて行われます。これらを適切に操作することで、トラフィックの流入・流出を制御します。

属性名説明
AS_PATH経路が通過してきたAS番号のリスト。自身のAS番号が含まれていればループと判断し破棄する。
NEXT_HOP次にパケットを転送すべき隣接ルーターのIPアドレス。
LOCAL_PREF同一AS内での優先度を指定。値が大きいほど、その経路が優先的に使用される(流出制御)。
MED (Multi-Exit Discriminator)隣接するASに対して、どのエントリポイントを使用すべきかを伝える(流入制御)。
COMMUNITYルートに付与するタグ情報。特定のルールに基づいた一括的な経路制御に使用される。

ルーティングプロトコルの比較

BGPは他のルーティングプロトコルとは、その「適用範囲」と「アルゴリズム」において明確に異なります。

比較項目BGP (External/Internal)OSPF / IS-IS (IGP)
主な用途AS間(インターネット全体)の接続AS内部(組織内ネットワーク)の接続
アルゴリズムパスベクトル型リンクステート型
スケーラビリティ極めて高い(数百万の経路を管理)中程度(エリア分割等で制限が必要)
決定基準ポリシー・属性ベースコスト(帯域幅やメトリック)ベース

セキュリティの変遷と最新動向

BGPの設計思想は「隣接するASからの情報を信頼する」という前提に基づいています。このため、誤った経路情報(存在しない経路や他者の所有するIPアドレス)を広告してしまう「BGPハイジャック」が発生し、通信の盗聴や遮断、誤誘導を招く事件が後を絶ちません。

2020年代以降、この脆弱性を克服するための技術実装が急速に進んでいます。特にRPKI (Resource Public Key Infrastructure)は、IPアドレスの所有権をデジタル署名によって証明する仕組みであり、Route Origin Validation (ROV) を通じて不正な経路広告を自動的に拒否することが標準的な運用となりつつあります。今後はBGPsecなどのより強固な認証プロトコルの普及と、運用の自動化・高度化が鍵となります。

関連用語との違い

  • eBGP (External BGP): 異なるAS間で動作するBGP。インターネットの境界で使用される。
  • iBGP (Internal BGP): 同一AS内で動作するBGP。AS内のルーター間で経路情報を同期するために使用される。
  • IGP (Interior Gateway Protocol): OSPFやRIPなどの総称。AS内部の最短経路計算に特化したプロトコル。

FAQ

Q1. BGPハイジャックが発生すると、具体的にどのような被害が出ますか?

A1. 通信トラフィックが攻撃者の管理するネットワークへ誤って誘導されます。これにより、通信内容の盗聴(中間者攻撃)、サービスへのアクセス不能(DoS攻撃)、あるいは偽サイトへの誘導といった深刻なセキュリティ侵害が発生します。

Q2. RPKIを導入すれば、すべてのBGP問題が解決しますか?

A2. RPKIは「経路の起点(Origin)が正しいか」を検証するものですが、AS_PATHの中間経路を偽装する攻撃(Path Hijacking)を防ぐには、さらに高度なBGPsecなどの技術が必要です。RPKIはあくまで第一の防御策です。

Q3. なぜBGPでは「最短距離」ではなく「属性」が重要視されるのですか?

A3. インターネットは商用ネットワークの集合体であり、コストや契約関係(ピアリング・トランジット)が複雑に絡むためです。物理的な最短経路よりも、「自社にとって安価な経路」や「信頼できるパートナーを経由する経路」を選択することが運用上不可欠だからです。

この記事について
カテゴリーネットワーク
難易度上級
作成日2026/5/18