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スーパーの棚に並ぶ1パック300円前後のプレミアムヨーグルトや、糖度15度を超える濃厚な米麹甘酒。これらを習慣的に買い続けると、月間の食費は意外なほど膨らみます。一方で、手作りには既製品では味わえない「自分好みの酸味」や「極上の甘み」を設計できるという、エンジニア的なカスタマイズの醍醐味があります。しかし、いざ挑戦してみると「なぜか分離して酸っぱくなってしまった」「甘酒がべたつかず水っぽい」といったトラブルに直面しがちです。その原因のほとんどは、米麹甘酒に必要な60℃・8時間という酵素活性のための温度維持や、ヨーグルト種菌を育てる40℃前後の精密な管理不足にあります。パナソニックのSR-MP160のような炊飯器の保温機能を活用するか、専用のヨーグルトメーカーを用いるか。道具の特性を理解し、温度の「設計図」を正しく実行するための具体的な方法と、失敗を防ぐためのノウハウを紐解いていきます。

甘酒やヨーグルトを自作する最大のメリットは、単なるコスト削減ではありません。それは、発酵プロセスにおける「酵素活性」と「菌の増殖速度」を、個人の好みに合わせて精密にコントロールできる点にあります。
例えば、米麹甘酒の場合、鍵となるのは米麹に含まれる「アミラーゼ」という分解酵素です。この酵素が米のデンプンをブドウ糖(マルトース)へと分解する際、最も効率的な温度帯は60℃前後です。市販の甘酒は、大量生産の都合上、加熱殺菌(レトルト処理)によって酵素活性を失わせているものが多く、後から糖分を添加しているケースも珍しくありません。一方、自作であれば、60℃の環境を8時間から12時間維持することで、余計な砂糖を加えることなく、麹本来の甘みだけで極めて高い糖度(Brix値)を持つ甘酒を作り出すことが可能です。
ヨーグルトについても同様です。市販品は菌の死滅を防ぐために低温殺菌されていますが、自作では「種菌」の特性を見極め、40℃から45℃という最適温度を維持することで、乳酸菌の増殖を最大化できます。これにより、酸味(乳酸)とコク(タンパク質の変性)のバランスを、その日の気温や使用する牛乳の脂肪分に合わせて微調整できるのです。
以下の表は、既製品と手作り品における、成分構成およびコントロール性の違いをまとめたものです。
| 比較項目 | 市販の甘酒・ヨーグルト | 自作(手作り)の甘酒・ヨーグルト |
|---|---|---|
| 糖度・酸味の制御 | 固定(製造ロットごとに一定) | 変動可能(温度時間で調整) |
| 着色料・保存料などの添加物 | 含まれる場合が多い | 原則としてゼロ(無添加) |
| 酵素活性(甘酒) | 加熱殺菌により失われていることが多い | 60℃維持により最大限に保持 |
| コスト(1回あたり) | 高め(パッケージ・流通費含む) | 低め(原料代のみ) |
| 栄養価の鮮度 | 長期保存を前提とした安定性 | 発酵直後の高い酵素活性・菌数 |
このように、自作は「温度という変数」を操作することで、味覚的なカスタマイズを可能にするプロセスそのものなのです。
発酵食品作りにおける成否は、使用するデバイスの「温度制御精度」に依存します。特に、0.5℃から1.0℃の温度偏差が菌の増殖や酵素の失活を招くため、安価な温度計ではなく、高精度なデジタルセンサーを備えた道具選びが重要です。
まず、ヨーグルト作りにおいては、専用の「ヨーグルトメーカー」を使用するのが最も確実です。例えば、パナソニックの「SR-YPC16」のような定評のあるモデルは、設定温度を40℃前後に一定に保つ能力に長けています。これに対し、安価な数百円程度の使い捨てカイロを用いた手法では、熱源の減衰による温度低下を防ぎきれず、雑菌(ボツリヌス菌やカビ類)の繁殖を許すリスクが高まります。
次に、甘酒作りにおける「炊飯器」の活用です。象印の「NS-ZCC10」のような、保温機能が安定しているモデルを使用する場合、「保温モード」を利用して60℃を維持します。ただし、炊飯器の保温温度は機種によって58℃〜70℃と幅があるため、必ずデジタル温度計(例:ThermoPro TP-03などのプローブ型)で実測し、設定温度との乖ッチを確認する必要があります。
材料についてもスペックへの理解が不可欠です。ヨーグルトに使用する牛乳は、脂肪分3.5%以上の「成分無調整牛乳」を選択してください。低脂肪乳やスカム(脱脂粉乳混入)を使用すると、タンパク質含有量が不足し、固まりにくい(凝固不全)という現象が起こります。
以下に、推奨される道具のスペック比較をまとめます。
| 道具・材料 | 推奨スペック・型番例 | 選定の判断軸(重要ポイント) |
|---|---|---|
| ヨーグルトメーカー | Panasonic SR-YPC16 | 温度設定の安定性、蓋の密閉度 |
| デジタル温度計 | ThermoPro TP-03 (プローブ型) | 測定精度(±0食〜0.5℃)、応答速度 |
| 炊飯器(甘酒用) | Zojirushi NS-ZCC10 等 | 保温機能の温度範囲(60℃付近が維持可能か) |
| 使用牛乳 | 成分無調整牛乳 (脂肪分3.5%以上) | タンパク質含有量による凝固力の確保 |
| 米麹 | 乾燥米麹 または 生米麹 | 酵素活性(アミラーゼ)の残存状態 |
発酵プロセスにおける最大の敵は、「温度の乱高下」と「外部からの雑菌混入」です。これらは、いわゆる「実装における落とし穴」であり、初心者が最も陥りやすい失敗パターンです。
まず、温度面でのトラブルについてです。甘酒作りにおいて、温度が65℃を超えてしまうと、アミラーゼの熱失活(タンパク質の変性)が起こります。これにより、デンプンが糖に分解されず、スカスカとした「味のない米粥」になってしまいます。逆に、50℃を下回ると、乳酸菌や麹菌の活動が極端に鈍化し、発酵時間が大幅に伸びるだけでなく、耐熱性の低い雑菌が優位になる隙を与えてしまいます。
次に、衛生管理(サニテーション)です。発酵は「善玉菌」を増やす作業ですが、同時に「悪玉菌」も増殖しやすい環境を作ることでもあります。使用する容器やスプーンに、目に見えない微量の細菌(Bacillus subtilisなど)が付着していると、温度が上昇した際にこれらが爆発的に増殖し、異臭やカビの原因となります。対策として、器具は必ず煮沸消毒するか、70%エタノールでの噴霧消毒を徹底してください。
以下に、よくある失敗の症状とその原因・対策を整理しました。
| 発生した現象 | 推定される原因 | 具体的な対処法 |
|---|---|---|
| 甘酒が甘くならない | 温度が高すぎ(65℃超)による酵素失活 | 60℃を維持できるよう、温度計で常時監視する |
| ヨーグルトに異臭がある | 雑菌の混入、または温度不足 | 使用器具の煮沸消毒、種菌量の増量 |
| ヨーグルトが液体状になる | 温度が高すぎ(45℃超)による過発酵 | 40〜42℃の範囲内に設定温度を固定する |
| 価 | カビの発生 | 容器の密閉不足、または不衛生な環境 |
自作の運用を継続するためには、初期投資(CAPEX)とランニングコスト(OPEX)のバランスを最適化する必要があります。発酵食品作りは、一度道具を揃えてしまえば、材料費のみで製造できるため、長期的なコストパフォーマンスは極めて高いと言えます。
予算が1,000円程度の「エントリープラン」では、既存の炊飯器(保温機能付き)と市販の種菌、安価なデジタル温度計のみを使用します。この場合、追加投資を最小限に抑えられますが、温度管理の精度が低いため、失敗のリスクを許容する必要があります。
予算3,000円〜5,000円の中級「ミドルプラン」では、専用のヨーグルトメーカー(Panasonic SR-YPC16等)を導入します。これにより、温度制御の自動化が可能となり、作業工数と失敗率を劇的に下げることができます。
予算10,000円以上の「プロフェッショナルプラン」では、高精度なインキュベーター(恒温器)や、より精密なセンサー類、さらに高品質な生米麹を大量に確保する体制を構築します。これにより、季節や天候に左右されない、極めて安定した品質の製品を量産することが可能になります。
以下に、予算別のセットアップ構成案を示します。
| プラン名 | 想定初期予算 | 構成アイテム例 | メリット・デメリット |
|---|---|---|---|
| エントリープラン | 約1,000円〜 | 既存の炊飯器、安価な温度計、市販種菌 | 【メリット】極低コスト<br>【デメリット】管理が困難 |
| ミドルプラン | 約3,000円〜5,000円 | ヨーグルトメーカー、デジタル温度計、米麹 | 【メリット】自動化と高精度な両立<br>【デメリット】中程度の初期投資 |
| プロフェッショナルプラン | 約10,000円〜 | 高精度インキュベーター、プローブ型精密センサー | 【メリット】究念の品質管理が可能<br>【デメリット】高い導入コスト |
自作のプロセスは、まさに「温度」というパラメータを制御するエンジニアリングに近い側面を持っています。適切な道具と知識を組み合わせることで、市販品では到達不可能な、栄養価と風味に優れた発酵食品を、低コストで手に入れることができるのです。
甘酒やヨーグルト作りにおいて、最も重要な要素は「温度の安定性」です。米麹甘酒を作る際に必要な60℃という高温を維持し続けるのか、あるいはヨーグルトに適した40℃前後のぬるい状態をキープするのかによって、選ぶべき道具は全く異なります。
まずは、手元にある道具を活用する方法から、専用のデバイスを導入する方法まで、主要な選択肢のスペックとコストを比較してみましょう。
自作を始める際、最初に見るべきは「温度をどれだけ正確に、かつ一定に保てるか」という点です。炊飯器の保温機能を利用する方法は手軽ですが、精密な温度制御には限界があります。一方で、デジタル温度コントローラーを使用すれば、プロに近い管理が可能になります。
| デバイス名 | 主な機能・役割 | 温度制御の精度 | 実売価格帯(目安) |
|---|---|---|---|
| パナソニック SR-MP10(炊飯器) | 保温機能による温度維持 | ±2℃〜3℃程度の変動あり | 12,000円 〜 15,000円 |
| アイリスオーヤマ YM-S01(ヨーグルトメーカー) | 設定温度での定温加熱 | ±1℃前後の安定性 | 2,000円 〜 3,000円 |
| Inkbird ITC-308(デジタル温度コントローラー) | サーモスタットによる外部制御 | ±0.1℃の極めて高い精度 | 4,500円 〜 5,500円 |
| デジタル料理用温度計(キッチンスケール併用) | 現時点の温度確認・監視 | 測定時のリアルタイム確認 | 800円 〜 1,500円 |
| 自作ヒーターセット(クーラーボックス+電熱線) | 低コストな恒温環境構築 | 制御器次第で可変 | 3,000円 〜 6,000円 |
炊飯器は、すでに家庭にあるため初期投資を抑えられますが、設定温度が「保温」という固定されたモードに依存するため、厳密な「60℃ちょうど」を維持するのは難しい場合があります。一方、ヨーグルトメーカーは40℃前後の管理に特化しており、非常に安定しています。本格的に糖度(Brix)をコントロールしたい上級者は、Inkbirdのような外部コントローラーを導入し、クーラーボックス内にヒーターを設置する「自作恒温槽」スタイルへ移行していくのが一般的です。
次に、あなたが「どのようなスタイルで発酵を楽しみたいか」に基づいた、おすすめの組み合わせを紹介します。予算と手間、そして求める仕上がりのクオリティによって、最適な選択肢は変わります。
| 目標とする用途 | 推奨デバイス構成 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 初心者:まずは手軽に始めたい | 既存の炊飯器 + 市販の種菌 | 追加費用がほぼゼロ | 温度変化による失敗のリスクあり |
| コスパ重視:安く大量に作りたい | ヨーグルトメーカー + 米麹 | 低価格で導入可能 | 大容量(2L以上)には不向き |
| 、 | |||
| こだわり派:糖度を一定にしたい | 外部コントローラー + 保温容器 | 極めて高い再現性と品質 | 設定と機材の準備に手間がかかる |
| プロ仕様:大量生産・長期保存 | クーラーボックス + ヒーター + サーモスタット | 安定した環境を大規模に構築可能 | 電気配線や設置場所の確保が必要 |
| メンテナンス重視:掃除のしやすさ | ステンレス製ヨーグルトメーカー | 雑菌対策(洗浄)が容易 | 衝撃に弱く、落とすと変形しやすい |
「まずはやってみたい」という方は、手持ちの炊飯器で試すのが一番の近道です。しかし、甘酒の糖度を計算通りに上げたい、あるいはヨーグルトの酸味を抑えたいといった具体的な要望が出てきたら、専用機器へのアップグレードを検討してください。
発酵は「温度」と「時間」の掛け算です。例えば甘酒の場合、温度を高く設定すれば時間は短縮できますが、高すぎると麹の酵素が死滅してしまいます。逆に、ヨーグルトも温度が高すぎると、乳酸菌以外の雑菌が増殖しやすくなります。
| 発酵対象 | 設定温度(目安) | 発酵時間(目安) | 仕上がりの特徴 | 注意点・リスク |
|---|---|---|---|---|
| 米麹甘酒 (高温設定) | 60℃ | 8時間 | 糖度が高く、濃厚な味わい | 酵素が失活する温度を超えないこと |
| 米麹甘酒 (低温設定) | 55℃ | 12時間〜15時間 | 穏やかで優しい甘み | 時間がかかり、菌の活動が鈍くなる |
| ヨーグルト (標準) | 40℃ | 8時間 | 適度な酸味と滑らかな質感 | 長すぎると酸味が強くなりすぎる |
| ヨーグルト (低温) | 35℃ | 12時間以上 | まるでチーズのような濃厚さ | 雑菌(カビ等)の混入リスクが増大 |
| ヨーグルト (高温) | 45℃ | 4時間〜5時間 | さっぱりとした軽い酸味 | 乳酸菌が弱まり、分離しやすくなる |
この表からわかる通り、温度を下げれば時間は長くなります。特に甘酒において「60℃」という数値は、アミラーゼ(デンプンを糖に変える酵素)が最も活発に働く、かつ死滅しない限界に近い絶妙なラインです。ここを外すと、単なる「温かい米水」になってしまうため、温度管理の精度が仕上がりの価値を左右します。
道具が揃ったら、次は材料の確保です。原材料は、スーパーで手に入るものから、専門店で購入する高品質なものまで幅広く存在します。
| 原材料の種類 | 主な入手方法 | 容量・形態の目安 | 価格目安 | 特徴・メリット |
|---|---|---|---|---|
| 生米麹(フレッシュ) | 地元の米屋・手作り販売 | 500g 〜 1kg (塊) | 500円 〜 800円 | 香りが非常に高く、糖度が出やすい |
| 乾燥米麹 | Amazon・楽天等のECサイト | 500g 〜 2kg (粉末/粒) | 800円 〜 1,500円 | 保存期間が長く、初心者でも扱いやすい |
| ヨーグルト種菌パウダー | 製菓材料店・オンラインショップ | 1袋 (数回分) | 600円 〜 1,200円 | 菌の純度が高く、失敗が少ない |
| 市販プレーンヨーグルト | 全国のスーパー・コンビニ | 400g 容器 | 150円 〜 25 Regulated | 最も安価だが、菌の勢いがバラつく |
| 米麹エキス(濃縮タイプ) | 自然食品店・百貨店 | 200ml ボトル | 1,000円 〜 2,000円 | 飲むだけで手軽に楽しめる |
自作の醍醐味は、この材料選びにあります。予算を抑えたい場合は、市販のヨーグルトを種菌にする方法が最も安上がりですが、本格的な「自作」を目指すなら、乾燥米麹と専用の種菌パウダーを揃えることをおすすめします。これだけで、仕上がりの安定感は劇的に向上します。
最後に、意外と見落としがちなのが「電気代」です。長時間の保温を行うため、デバイスによってはコストが蓄積されます。
| 発酵方式 | 想定される消費電力 (W) | 1回あたりの電気代目安 | 制御の難易度 | 安定性・信頼性 |
|---|---|---|---|---|
| 炊飯器(保温モード) | 40W 〜 60W | 約5円 〜 10円 | 低(スイッチのみ) | 中(温度の上下がある) |
| 専用ヨーグルトメーカー | 20W 〜 40W | 約3円 〜 7円 | 低(設定が簡単) | 高(一定温度を維持) |
| 自作恒温槽 (ヒーター使用) | 100W 〜 300W | 約15円 〜 45円 | 高(回路設計が必要) | 極めて高(精密制御が可能) |
| 温水器・湯煎方式 | 1000W以上 (加熱時) | 約50円 〜 100円 | 中(温度管理が困難) | 低(熱が逃げやすい) |
| クーラーボックス+小型保冷剤 | 0W (無電源) | ほぼゼロ | 高(自然放熱に依存) | 極めて低(時間経過で温度低下) |
※電気代は、1回あたりの稼働時間を8〜12時間、電気料金単価31円/kWhとして算出。
自作の究極形である「ヒーターを用いた恒温槽」は、加熱時の消費電力こそ大きいものの、一度温度が安定すればサーモスタットによってスイッチがオフになるため、実際のランニングコストは意外に低く抑えられます。一方で、炊飯器やヨーグルトメーカーは、機器自体の消費電力は低いものの、温度を一定に保つための「熱の逃げ」に対して、常に加熱し続ける必要があるため、効率面では差が出ることがあります。
市販のヨーグルト(例:明治ブルガリアヨーグルト 400g)は1パック約200円〜250円程度です。一方、自作の場合は牛乳400mlと種菌(1パック約30円)を使用するため、1回あたりのコストを約70円〜90円に抑えられます。1ヶ月に4回作る計算でも、月間約600円程度の節約が可能です。材料費の安さだけでなく、糖分や添加物をコントロールできる点も大きなメリットです。
最低限必要な道具を揃える場合、予算は3,000円〜5,000円程度が目安です。パナソニックのヨーグルトメーカー(SR-AD10など)が約3,500円、デジタル温度計が約1,000円、消毒用の煮沸用容器などが約500円といった内訳です。炊飯器の保温機能を利用する場合は、温度計代の1,000円程度からスタートできるため、より低予算での運用も可能です。
精度を重視するなら、専用のヨーグルトメーカーが圧倒的におすすめです。パナソニックのSR-AD10のような製品は、発酵に最適な40℃前後の温度を一定に保つ設計になっています。炊飯器の「保温モード」は設定温度が高すぎたり(70℃前後)、温度変化が激しかったりするため、菌が死滅するリスクがあります。手軽さを取るか、失敗を防ぐ安定性を取るかが判断基準となります。
使い勝手を重視するなら「乾燥麹」が便利です。マルコメの乾燥麹などは常温保存が可能で、計量も容易です。一方、より濃厚な甘みと酵素活性を求めるなら「生麹(生の米麹)」が適しています。生麹は水分量が多く酵素が活発ですが、冷蔵保存でも数日で品質が落ちるため、こまめに購入する必要があります。初心者の方は、まずは扱いやすい乾燥麹から始めるのが失敗の少ない選択です。
豆乳やアーモンドミルクでも作れますが、仕上がりの固まり方は大きく異なります。牛乳に含まれる「カゼイン」というタンパク質が固まる性質を利用しているため、植物性ミルクの場合は固まりにくい傾向があります。成功させるには、豆乳のタンパク質含有量が2.5g/100ml以上あるものを選び、必要に応じてゼラチンや増粘剤を加えるなどの工夫が必要です。
デジタル温度計は、測定誤差が「±0.1℃〜±0.5℃」の範囲に収まる精密なものを選んでください。料理用の安価な thermometer では、1〜2℃の誤差が生じることがあります。甘酒の麹菌(アミラーゼ活性)やヨーグルトの乳酸菌は、温度が数度ズレるだけで発酵速度が劇的に変わったり、雑菌が増殖したりします。精度が高い、料理用デジタル探針温度計の使用を推奨します。
もし、腐敗臭(ドブのような臭い)やカビ臭い場合は、雑菌の混入による失敗です。これは温度管理が不適切で、40℃を下回る時間が長かったことが原因であることが多いです。一方で、ヨーグルトに「強い酸味」がある場合は、発酵時間が長すぎて乳酸が過剰に生成された状態です。この場合は、食べられなくはないものの、風味は損なわれています。温度の一定保持と清潔な器具の使用が不可欠です。
煮沸消毒(100℃の熱湯に数分間浸す)が最も確実で簡単です。ピレックス(Pyrex)などの耐熱ガラス容器を使用し、熱湯を注ぐだけで、大腸菌や酵母などの雑菌をほぼ完全に除去できます。アルコール消毒を行う場合は、70%濃度のエタノールを使用してください。道具の衛生状態が、発酵食品の品質と安全性を左右する最も重要なプロセスとなります。
可能です。SwitchBot(スイッチボット)などの温湿度計を容器の近くに設置し、スマートフォンでリアルタイムの温度推移をグラフ化して管理するユーザーが増えています。これにより、「いつ温度が下がったか」「発酵がピークに達したのは何時か」をログとして記録できるため、レシピの最適化(再現性の向上)に非常に役立ちます。
非常に高いと言えます。近年のSDGsやヴィーガン需要に伴い、オーツミルクやココナッツミルクを用いた発酵食品の研究が進んでいます。これらは従来の乳製品よりも低カロリーでコレステロールを含まないため、健康志向の層から注目されています。今後、特定の菌株(プロバイオティクス)に最適化した植物性ミルク専用のスターターキットなどが普及する可能性があります。
手作り甘酒やヨーグルトは、適切な温度管理さえマスターすれば、市販品よりも低コストで自分好みの味を実現できる素晴らしい習慣です。今回の記事の要点を整理します。
・米麹甘酒は「60℃で約8時間」の維持が、糖度を最大限に引き出すポイント ・ヨーグルトは「40℃前後」の一定温度を守ることで、種菌を効率よく増殖させる ・初期投資は、専用メーカーや炊飯器活用を含めても1,000円〜3,000円程度で可能 ・雑菌による腐敗を防ぐため、器具の煮沸消毒など徹底した衛生管理が成功の必須条件 ・市販品との比較では、添加物なしの純粋な素材の味を楽しめるメリットが大きい ・失敗(分離や酸味の強すぎ)の多くは、温度変化による菌の活動抑制が原因
まずは手持ちの炊飯器の保温機能を使って、小さなロットから実験的に作ってみることをおすすめします。一度発酵のメカニズムを理解してしまえば、季節に応じたアレンジも自由自在に楽しめるようになります。