Intel 8008 (1972)(インテルハチマルマルハチ)
Intel が 1972 年 4 月に発表した世界初の商用 8-bit マイクロプロセッサ。4004 の後継として Computer Terminal Corporation (CTC) が依頼した Datapoint 2200 端末用に設計、8-bit データバス・3,500 トランジスタ・10μm プロセスで現代 x86 系列の直接の祖先となった重要 CPU。
概要
Intel 8008 は、Intel が 1972 年 4 月に発表した世界初の商用 8-bit マイクロプロセッサで、4004 の後継として Computer Terminal Corporation (CTC、後の Datapoint Corporation) が依頼した Datapoint 2200 プログラマブル端末用に設計された重要 CPU です。8-bit データバス・3,500 トランジスタ・10μm シリコンゲート MOS プロセスで、4004 の 4-bit から 8-bit に拡張、メモリアドレス空間も 14-bit (16KB) に拡大されました。CTC がコスト問題で 8008 採用を見送り (代わりに TTL ロジックで構築) Intel 単独販売となったが、Hewlett-Packard・SCELBI (1973 年 SCELBI-8H、世界初の市販マイクロコンピュータキット)・Mark-8 (1974 年自作 PC) などの初期コンピュータで採用、その後 Intel 8080 (1974)・Z80 (1976)・8086 (1978) と継承されて現代 x86 アーキテクチャの直接祖先となった、CPU 史上極めて重要な位置を占める CPU です。
主な特徴・仕組み
- 発表: 1972 年 4 月 Intel
- 設計: 4004 と同じ Federico Faggin チーム
- 発注: Computer Terminal Corporation (CTC)
- プロセス: 10μm シリコンゲート PMOS
- トランジスタ: 3,500 個 (4004 比 1.5 倍)
- データバス: 8-bit
- アドレスバス: 14-bit、最大 16KB メモリ
- クロック: 0.5-0.8MHz (商用)、最大 1MHz
- 電源: +5V・-9V の二電源
- パッケージ: 18-pin DIP
- 命令数: 48 命令、4004 から大幅拡張
- 後継: Intel 8080 (1974 年、x86 系列開始)
スペック比較表 (4004 → 8008 → 8080)
| CPU | 年 | bit | クロック | アドレス空間 | トランジスタ |
|---|---|---|---|---|---|
| Intel 4004 | 1971 | 4 | 740kHz | 4KB | 2,300 |
| Intel 8008 | 1972 | 8 | 800kHz | 16KB | 3,500 |
| Intel 8080 | 1974 | 8 | 2MHz | 64KB | 4,500 |
| Intel 8085 | 1976 | 8 | 3MHz | 64KB | 6,500 |
| Zilog Z80 | 1976 | 8 | 4MHz | 64KB | 8,500 |
具体例・対応技術 / 歴史的価値
- SCELBI-8H (1973): 世界初の市販マイクロコンピュータキット、Don Lancaster 設計
- Mark-8 (1974): ホビイスト向け自作 PC、Radio-Electronics 誌で記事掲載
- MCM/70 (1973): カナダの初期パーソナルコンピュータ
- Datapoint 2200: CTC が採用せず、皮肉にも 8008 商業利用の起点とならず
- 8008 系列: 後の Intel 8080-8085-8086 に発展、x86 直系の起点
自作PCでの選び方・注意点
Intel 8008 は当然ながら自作 PC では直接利用しませんが、初期マイクロプロセッサの設計思想を理解する重要な参考材料として、コンピュータサイエンス史・x86 アーキテクチャ進化の起点として把握する価値あり。1972 年の 3,500 トランジスタ・8-bit から、2026 年の Apple M4 (280 億トランジスタ・64-bit) に至るまでの半世紀の進化を辿る出発点として位置付けられ、レトロコンピューティング・電子工作コミュニティで Verilog/VHDL による 8008 再現プロジェクトが大学・趣味コミュニティで実施されています。SCELBI-8H・Mark-8 などの初期自作マイクロコンピュータの実機は世界に数台しか現存せず、Computer History Museum・Living Computers Museum (Seattle) で実機を確認できます。Federico Faggin の 4004→8008 設計の連続性は半導体産業史の貴重な学習材料、現代の Intel Core/AMD Ryzen の遠い祖先として技術的興味があります。
関連用語との違い
- Intel 4004: 親、4-bit、電卓用
- Intel 8080: 後継、x86 系列の起点
- MOS 6502 (1975): 競合 8-bit、Apple II・Commodore 64 で活躍
よくある質問(FAQ)
Q1: 8008 と 8080 の違いは? A: 8008 はピン互換性なし・命令セット限定、8080 はピン拡張 (40-pin) ・命令セット 78 命令・クロック 2MHz と大幅強化、ほぼ別 CPU。
Q2: なぜ CTC は 8008 を採用しなかった? A: 当時の Datapoint 2200 が TTL ロジックで既に完成、8008 速度が要件を満たさず、CTC は TTL 版で出荷を続けた。Intel の販売契約は維持。
Q3: 8008 の現代的意義は? A: x86 アーキテクチャの起点として歴史的価値、技術的には 4004 と 8080 の中間段階で限定的。Hewlett-Packard 9810・SCELBI など初期マイコン採用が主用途。
まとめ
- Intel 8008 = 1972 年発表、世界初の商用 8-bit マイクロプロセッサ
- 4004 後継、3,500 トランジスタ・10μm・16KB メモリ対応
- CTC 採用せず、SCELBI-8H・Mark-8 で商業利用
- Intel 8080-8086-x86 系列の直接祖先、CPU 史の重要中継点