Western Electric 555(ウェスタンエレクトリックゴーゴーゴー)
米Western Electricが1924年発表した世界初の劇場用音声増幅ドライバ。Talkies映画黎明期音響を支えた歴史的銘機。
概要
Western Electric 555 は、1924 年に米 Western Electric 社(AT&T 子会社、Bell Labs と並ぶ研究組織)が発表した世界初の本格的な劇場用音声増幅コンプレッションドライバ。1920 年代後半の Talkies(音声付き映画)黎明期、サイレント映画から音声映画へ移行する時代の劇場音響を支えた歴史的銘機で、現代のホーンドライバ設計思想の原点として位置付けられる。
WE 555 は当時の最先端電気音響工学の結晶で、Receiver 555W(電気-音響変換ユニット) + Horn 22A(指向性付与ホーン) + Horn 13A(広指向性ホーン) + Horn 12A(狭指向性ホーン)の組合せで、6,000 平方フィート(556㎡)級の劇場全体に均質な音声を届ける性能を実現。当時の販売価格は US$200(1925 年、現代換算 US$3,500)で、米国全土の数千の劇場に納入された。現代でも Audiophile 業界での評価は伝説級で、稀少な完動品は US$50,000 を超える価格で取引される。
主な特徴・仕組み
- 発表年: 1924 年(試作)/ 1925 年量産開始 / 1933 年生産終了
- 設計者: Edward Wente(Bell Labs、後に WE Type 12A 開発者)
- 磁気回路: 永久磁石型(後にフィールドコイル型 555W)
- ダイヤフラム: アルミニウム(直径 1.75 インチ)
- 対応ホーン: 22A / 13A / 12A / 16A など WE 純正ホーン群
- 再生周波数: 100Hz - 5,000Hz(ドライバ単体)
- 能率: 110-115dB/W(ホーン込)、現代基準でも超高能率
- 入力インピーダンス: 6Ω
- 耐入力: 4W(当時の真空管アンプに最適化)
- 販売数: 約 100,000 個(1925-1933、米国全土の劇場用途)
スペック比較表
| 製品/規格 | 発表年 | 形式 | 能率 | 価格帯(当時) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| Western Electric 555 | 1924 | コンプレッションドライバ | 110dB | US$200 | 世界初劇場用ドライバ |
| Western Electric 16A Horn | 1929 | ストレートホーン | - | US$300 | WE 555 専用 9 フィート長 |
| RCA MI-9594 Horn | 1937 | フォールドホーン | - | US$280 | RCA 開発、コンパクト化 |
| JBL D175 | 1947 | コンプレッションドライバ | 105dB | US$150 | JBL 初代ドライバ |
| Altec 288 | 1945 | コンプレッションドライバ | 110dB | US$185 | Altec A7 用 |
具体例・対応製品
- WE 555 単体: 1925-1933 年生産、現存数推定 5,000 個未満。完動品は希少品市場で US$30,000-100,000 の価格で取引。
- WE 純正ホーン: 22A(短い指向性ホーン US$80)、13A(広角 US$120)、12A(狭角 US$150)、16A(劇場用 9 フィート長 US$300)。各ホーンは独立販売。
- 後継機: Western Electric 594A(1936 年、Wide Range 拡張版)、Western Electric 597A(1938 年、最終世代)。
- ヴィンテージ評価: 米 Stereophile 誌「20 世紀最重要オーディオ機器 50 選」第 1 位(1999 年)、英 Hi-Fi News 誌「Greatest Hi-Fi of All Time 100」殿堂入り。
- 対応劇場: 1925-1940 年代の米国主要映画館(パラマウント、20 世紀フォックス、MGM、ワーナー所有劇場等)に標準装備。
自作PCでの選び方・注意点
WE 555 は 現代の Hi-Fi システムに直接組み込むには専門知識が必要。専用フィールドコイル電源(DC 直流電源、当時は別売)、大型ホーン(最低 6 フィート長以上)、低出力 SET(Single-Ended Triode)真空管アンプ(300B、2A3、45 等)との組合せが推奨される。
注意点として、真贋判定が極めて困難。1925-1933 年の本物 555 と、1990 年代以降のコピー品(中国製、欧米個人作家製)の区別は専門家でも難しい。購入時は WE 純正シリアル番号 + 内部構造写真 + 第三者鑑定証明の確認が必須。
また、保管環境による劣化にも注意。アルミニウムダイヤフラムは経年で硬化し、磁気回路の磁束密度も低下する。元のスペックを 100% 維持する個体は皆無で、現存品はすべて「歴史遺産」として扱うべき。
関連用語との違い
| 用語 | 発表年 | 用途 | WE 555 との違い |
|---|---|---|---|
| Altec 288 | 1945 | 劇場用ドライバ | Altec は WE の後継、555 は元祖 |
| JBL D175 | 1947 | 民生用ドライバ | JBL は民生指向、555 は劇場専用 |
| Western Electric 597A | 1938 | Wide Range 拡張 | 597A は 555 改良版 |
よくある質問(FAQ)
Q1: WE 555 は今でも実用機材として使えるか? A: 物理的には動作するが、現代基準の Hi-Fi 機器としては「歴史遺産」と位置付けるべき。低域不足(100Hz 以下不対応)+ 経年劣化により、実用機材としての性能は限定的。
Q2: なぜ現代でも US$50,000 で取引されるのか? A: 「現代の機器では再現できない 1920 年代音響工学の結晶」+「希少性」+「歴史的価値」の 3 軸で価格が形成される。投資商品としても評価され、年率 5-10% の価格上昇傾向が継続。
Q3: 555 を使うために必要な機器は? A: 専用フィールドコイル電源(US$3,000-)、WE 純正ホーン(US$5,000-15,000)、SET 真空管アンプ(US$10,000-)、防振脚(US$2,000-)など、合計 US$70,000-100,000 のシステム投資が必要。
まとめ
- 米 Western Electric 1924 年発表の世界初劇場用コンプレッションドライバ
- Talkies 映画黎明期の劇場音響を支えた歴史的銘機
- 1925-1933 年生産、現存推定 5,000 個未満の超希少品
- 完動品市場価格 US$30,000-100,000 級
- 現代ホーンドライバ設計思想の原点・伝説級ヴィンテージオーディオ