
Core Ultra 200Sシリーズ(Arrow Lake)の登場により、プラットフォームはLGA1700からLGA1851へと刷新されました。単なるソケット変更に留まらず、Thunderbolt 5による最大120Gbpsの帯域確保や、DDR5-8000MT/sを超える超高速メモリ動作への最適化など、Z890チップセットがもたらす進化は多岐にわたります。しかし、複雑化したVRM設計やPCIe 5.0レーンの割り当て、Wi-Fi 7の標準搭載など、スペック表だけでは判断しにくい実効性能の差に悩むユーザーは少なくありません。特に、タイル構造を採用した新アーキテクチャにおいて、電力効率を最大化しつつ性能を限界まで引き出すためのマザーボード選びは、自作PCの成否を分ける重要なポイントとなります。Z890がもたらす技術的ブレイクスルーを深掘りし、ハイエンド環境を構築するために不可欠な選定基準を明確にすることで、最適なパーツ構成を実現させます。
Intelの最新世代「Arrow Lake-S(Core Ultra 200Sシリーズ)」の登場に伴い、マザーボードのプラットフォームはLGA1700からLGA1851へと移行しました。物理的なソケットサイズはほぼ同一ですが、ピン配置の変更により互換性は完全に排除されています。Z890チップセットの最大の変更点は、CPU内部に統合されたI/Oダイの最適化と、メモリコントローラーの刷新です。特に注目すべきは「CUDIMM(Clocked Unbuffered DIMM)」への対応です。従来のDDR5メモリとは異なり、メモリモジュール上にCKD(Clock Driver)チップを搭載することで、信号の整合性を向上させ、8,000MT/sを超える超高速域での動作安定性を確保しています。Z890マザーボードの多くは、このCUDIMMを前提とした設計となっており、メモリクロックの限界値が飛躍的に向上しています。
電源回路(VRM)の設計思想も深化しています。Arrow Lake-Sは電力効率が改善された一方で、高負荷時の瞬間的なピーク電力(Transient Response)への対応が求められます。ハイエンドモデルでは、110A以上のSmart Power Stage(SPS)を搭載した20+1+2フェーズ以上の構成が標準的となり、Vcoreへの安定供給を実現しています。また、PCI Express 5.0の帯域割り当てが最適化され、GPUスロットだけでなく、M.2 NVMe SSDスロットにおいてもGen5(最大128Gbps)の高速伝送を維持しつつ、他のPCIeレーンへの干渉を最小限に抑える設計が採用されています。
さらに、外部インターフェースの進化として「Thunderbolt 5」のネイティブ実装が挙げられます。最大120Gbps(帯域ブースト時)の転送速度を実現し、複数の4K/144Hzディスプレイ出力や、超高速外付けストレージの運用を可能にします。これはクリエイターやハイエンドゲーマーにとって、外部デバイスのボトルネックを完全に解消する重要なアップデートです。
| 項目 | Z790 (LGA1700) | Z890 (LGA1851) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 対応CPU | Core 12th / 13th / 14th Gen | Core Ultra 200S シリーズ | ソケット互換性なし |
| メモリ規格 | DDR5 (Standard) | DDR5 / CUDIMM | CKD搭載による高クロック化 |
| 最大メモリ速度 | 7,200〜8,000MT/s (OC) | 8,400MT/s〜 (OC) | CUDIMM採用モデルで向上 |
| 外部I/O | Thunderbolt 4 (40Gbps) | Thunderbolt 5 (最大120Gbps) | 帯域幅が最大3倍に拡大 |
| PCIe規格 | PCIe 5.0 (一部) | PCIe 5.0 (標準化) | M.2 Gen5の普及が進展 |
Z890マザーボードは、ターゲット層に応じて「エンシュージアスト」「ハイエンドゲーミング」「メインストリーム」の3層に分かれています。最上位のエンシュージアスト向けモデルである「ASUS ROG Maximus Z890 Extreme」や「MSI MEG Z890 GODLIKE」は、OC性能を極限まで高めるために、24+1+2フェーズなどの過剰とも言えるVRM構成を備えています。これらのモデルでは、液体窒素(LN2)冷却を想定した専用端子や、電圧制御を精密に行うためのハードウェアスイッチが搭載されており、150,000円を超える価格帯となりますが、Core Ultra 9 285Kの潜在能力を100%引き出すための必須条件となります。
次に、実用的なハイエンドとして位置づけられる「ASUS ROG Strix Z890-E Gaming WiFi」や「Gigabyte Z890 AORUS MASTER」などの層です。ここでは、VRM性能と拡張性のバランスが重視されます。具体的には、M.2 Gen5スロットを2〜3基搭載しつつ、GPUスロットの帯域を削らない設計(PCIe Lane Bifurcationの最適化)が評価基準となります。また、Wi-Fi 7 (802.11be) の標準搭載により、最大5.8Gbpsの無線通信が可能です。価格帯は80,000円〜120,000円程度に収まり、多くのハイエンドユーザーにとって最適解となる選択肢です。
中級者向けのメインストリームモデル、例えば「ASRock Z890 Steel Legend WiFi」や「MSI PRO Z890-A WIFI」などは、コストパフォーマンスを重視しつつ、Z890の基本機能を網羅しています。VRMは16+1+1フェーズ程度に抑えられていますが、Core Ultra 7 265Kまでの運用であれば十分な余裕があります。選定の際は、以下の優先順位でスペックを確認することを推奨します。
Z890プラットフォームへの移行において最も注意すべきは、メモリの互換性と安定性です。前述のCUDIMMは非常に強力ですが、従来のDDR5(Standard UDIMM)を混在させることは不可能です。また、8,000MT/sを超える設定を行う場合、マザーボードの「メモリスロット配置」による信号減衰の影響を強く受けます。4枚差し(Full Bank)構成にした場合、メモリコントローラーへの負荷が増大し、動作クロックが6,400MT/s〜7,200MT/s付近まで大幅に低下する傾向があります。極限の速度を求める場合は、2枚構成(2-DIMM)のモデルを選択するか、厳選されたXMPキットを使用する必要があります。
冷却面での落とし穴は、Arrow Lake-Sの熱密度(Heat Density)の変化です。消費電力自体は抑制されていますが、ダイサイズが小型化されたため、熱が局所的に集中する傾向があります。LGA1700互換のクーラーが物理的に装着可能であっても、接地面の圧力分布が異なるため、Core Ultra 9 285KのようなハイエンドCPUでは、Noctua NH-D15 G2のような最新設計の空冷、あるいは360mm以上の水冷クーラー(例:Corsair iCUE H150i)で適切に密着させなければ、PL2(最大電力制限)到達時に即座にサーマルスロットリングが発生します。
さらに、Thunderbolt 5の運用における注意点があります。120Gbpsという超広帯域をフルに活用するには、ケーブル側も「Active Cable」である必要があり、安価なパッシブケーブルでは速度が大幅に制限されます。また、BIOS設定において「PCIe Lane Bifurcation(レーン分岐)」を誤ると、M.2 SSDが認識されなかったり、GPUがx8動作に低下したりすることがあります。特にGen5 SSDを複数搭載する場合、どのスロットがCPU直結で、どのスロットがチップセット経由かを正確に把握し、帯域の競合を避ける設定が不可欠です。
| 発生しやすい問題 | 原因 | 解決策・回避策 |
|---|---|---|
| メモリOCが不安定 | 4枚差しによる信号劣化 | 2枚構成に変更、またはCUDIMM採用モデルを選択 |
| CPU温度の急上昇 | 熱伝導効率の低下(熱密度増) | 高性能グリス(Thermal Grizzly等)と最新密着プレートの使用 |
| SSDの認識不可 | PCIeレーンの競合(Bifurcation) | BIOSでレーン割り当てを再設定し、優先スロットを確認 |
| TB5の速度低下 | ケーブルの規格不適合 | Thunderbolt 5認定のActiveケーブルを使用 |
| Vcore電圧の不安定 | VRMの熱飽和 | VRMヒートシンクへの能動冷却(ファン)の追加 |
Z890マザーボードの性能を最大限に引き出すには、単なるXMP適用だけでなく、電力制限(PL1/PL2)の最適化と電圧オフセットの調整が不可欠です。Core Ultra 200Sシリーズは、デフォルト設定では電力効率を優先していますが、ハイエンドボードの「Extreme Profile」を適用することで、PL2を250W〜300Wまで解放し、マルチスレッド性能を10〜15%向上させることが可能です。ただし、これには強力な冷却環境が前提となります。具体的には、CPU温度を85℃以下に維持しつつ、Vcore電圧を1.3V〜1.35V付近で安定させるチューニングが推奨されます。
メモリの最適化においては、CUDIMMの特性を活かした「低レイテンシ設定」が鍵となります。単にクロックを8,400MT/sまで上げるのではなく、CAS Latency (CL) を36〜38程度まで詰め、tRFCなどの副次的なタイミングを絞り込むことで、ゲーミング性能(特に1% Low FPS)を劇的に改善できます。この際、マザーボード各社が提供するAI Overclocking機能(ASUS AI OverclockingやMSI Intelligent Overclocking)を利用することで、個体差(シリコンバレー)に合わせた最適な電圧・クロックの組み合わせを自動的に算出させることが可能です。
コスト運用の戦略としては、予算配分の最適化が重要です。15万円の最上位ボードを購入しても、メモリを標準的なDDR5-5600で運用していれば、その性能の半分も活用できていません。むしろ、ボードを8〜10万円の中上位モデル(例:Z890 Aorus Elite)に抑え、浮いた予算をCUDIMM 8,000MT/s以上のメモリキットや、Gen5 SSD(例:Crucial T705 2TB)に投資する方が、システム全体の体感速度は向上します。
【最適化チェックリスト】
Intel Core Ultra 200Sシリーズ(Arrow Lake)の性能を最大限に引き出すには、LGA1851ソケットに対応したZ890マザーボードの選定が不可欠です。特に今世代では、Thunderbolt 5の標準搭載化やDDR5メモリの超高クロック対応、PCIe 5.0のレーン構成が製品ごとの差別化ポイントとなっています。
まずは、ハイエンド市場を牽引する各社のフラッグシップおよびアッパーミドルモデルの基本スペックを比較します。VRMフェーズ数や対応メモリ速度は、Core Ultra 9 285Kなどの高消費電力CPUをオーバークロック(OC)運用する際の安定性に直結します。
| 製品名 | VRM構成 (SPS/DrMOS) | 最大メモリ速度 (OC) | Thunderbolt 5 ポート数 | M.2 Gen5 スロット数 |
|---|---|---|---|---|
| ASUS ROG Maximus Z890 Hero | 22+1+2+2 (110A) | 8400MHz+ | 2ポート | 3スロット |
| MSI MEG Z890 ACE | 24+1+2 (110A) | 8200MHz+ | 1ポート | 3スロット |
| Gigabyte Z890 AORUS Master | 20+1+2 (105A) | 8200MHz+ | 1ポート | 3スロット |
| ASRock Z890 Taichi | 20+1+2 (105A) | 8000MHz+ | 2ポート | 2スロット |
製品によって電源回路の設計思想が異なります。ASUSやMSIは特に高負荷時の電圧安定性に注力しており、110Aクラスの高効率SPS(Smart Power Stage)を搭載することで、250Wを超えるPL1/PL2設定時でもVRM温度を低く抑える設計となっています。
次に、ユーザーの利用目的(ユースケース)に応じた最適解を整理します。単にスペックが高いモデルを選べば良いわけではなく、ストレージの拡張性やネットワーク帯域(Wi-Fi 7 / 10GbE)など、自身のワークフローに合わせた選択が重要です。
| 利用目的 | 推奨モデル例 | 重視すべきスペック | 期待されるメリット |
|---|---|---|---|
| 超高負荷OC・ベンチマーク | ROG Maximus Z890 Hero | VRM冷却性能・メモリOC耐性 | 限界までクロックを上げた際の安定動作 |
| 4K/8K動画編集・制作 | MEG Z890 ACE | M.2 Gen5数・Thunderbolt 5 | 外部高速ストレージへの超高速転送 |
| ゲーミング・ストリーミング | Z890 AORUS Master | Wi-Fi 7・LANチップセット | 低遅延ネットワークと安定したフレームレート |
| コストパフォーマンス重視 | Prime Z890-P / PRO Z890-A | 基本的な拡張性・価格 | 必要十分な機能で予算をGPUに配分可能 |
クリエイティブ用途では、Thunderbolt 5による最大120Gbps(帯域ブースト時)の転送速度が大きな武器になります。一方、ゲーマーはメモリのレイテンシを低減させるため、DDR5-8000MHz以上のプロファイルに対応したモデルを選択することが、最小FPSの向上に寄与します。
また、Arrow Lake世代では電力効率が改善されたとはいえ、ハイエンド構成では依然として消費電力と発熱が課題となります。特にVRMの冷却方式(ヒートシンクの体積やアクティブファン搭載の有無)によって、サーマルスロットリングの発生タイミングが変動します。
| 冷却設計タイプ | 代表的な製品群 | 想定最大負荷電力 | VRM想定温度 (負荷時) | OC安定性 |
|---|---|---|---|---|
| 大型ヒートシンク+ファン | ROG Maximus / MEG ACE | 300W+ | 60〜75℃ | 極めて高い |
| 大型ヒートシンク (パッシブ) | AORUS Master / Taichi | 250W〜280W | 70〜85℃ | 高い |
| 標準ヒートシンク | Strix / MPG Carbon | 200W〜230W | 80〜95℃ | 中程度 |
| スリム/エントリーヒートシンク | Prime / PROシリーズ | 150W〜200W | 90℃〜 | 低(定格推奨) |
冷却性能が不十分なボードでCore Ultra 9を常用する場合、VRM温度が100℃に近づくとCPU側に電力制限(Power Limit)がかかり、本来の性能を発揮できなくなる可能性があります。水冷CPUクーラーを導入する場合でも、マザーボード側のVRM冷却が十分であるかを確認してください。
次に、接続規格の互換性についてまとめます。Z890ではPCIe 5.0の普及が進んでいますが、M.2スロットにGen5 SSDを搭載すると、グラフィックスカード(GPU)側のPCIe 5.0 x16スロットからレーンが分岐し、x8動作に低下するモデルが存在します。
| 機能/規格 | ハイエンドモデル (Hero/ACE) | アッパーミドル (Strix/Carbon) | エントリー (Prime/PRO) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| PCIe 5.0 x16 スロット | 搭載 (レーン分岐あり) | 搭載 (レーン分岐あり) | 搭載 | GPU Gen5対応 |
| M.2 PCIe 5.0 スロット | 3〜5スロット | 2〜3スロット | 1〜2スロット | ヒートシンク標準装備 |
| USB 4 / Thunderbolt 5 | 標準搭載 (2ポート〜) | オプション/1ポート | 非搭載/USB 3.2 Gen2 | 速度 80-120Gbps |
| Wi-Fi 規格 | Wi-Fi 7 (BE200系) | Wi-Fi 7 / 6E | Wi-Fi 6E / 6 | 6GHz帯対応 |
| 有線LAN速度 | 10GbE / 5GbE | 2.5GbE / 5GbE | 2.5GbE | Intel/Realtek製 |
特にM.2 Gen5 SSDを複数枚搭載する場合、CPU直結レーンを消費するため、GPU側の帯域低下を許容できるか、あるいはチップセット経由のGen4スロットで十分かを検討する必要があります。
最後に、日本国内における流通価格帯の目安を提示します。Z890マザーボードは、Thunderbolt 5コントローラーなどの高価なチップを搭載しているため、前世代のZ790よりも価格帯が底上げされる傾向にあります。
| 価格帯 (税込) | ターゲット層 | 主な搭載機能 | 期待される製品ライン |
|---|---|---|---|
| 120,000円 〜 180,000円 | 究極の性能追求者 | 全機能盛り込み・最強VRM | ROG Maximus / MEG ACE |
| 80,000円 〜 110,000円 | ハイエンドゲーマー | 高速メモリ対応・Wi-Fi 7 | ROG Strix / AORUS Master |
| 60,000円 〜 80,000円 | 実用的な高性能志向 | Gen5 SSD対応・標準的VRM | MPG Carbon / Z890 Elite |
| 40,000円 〜 60,000円 | コスト重視・定格運用 | 基本機能完備・定格向けVRM | Prime / PRO / Steel Legend |
予算を抑えたい場合は、Thunderbolt 5などの特殊機能が不要かを見極めることで、4〜6万円台のモデルでもCore Ultra 200Sの基本性能を十分に享受することが可能です。逆に、次世代のPCIe 5.0対応GPUや超高速外付けストレージへの投資を計画しているなら、10万円以上のハイエンドモデルを選択するのが賢明です。
主な要因は、Thunderbolt 5の標準搭載化と、Core Ultra 200Sシリーズの電力効率最適化に伴うVRM設計の刷新です。例えばASUS ROG MAXIMUS Z890 HEROのようなハイエンドモデルでは、最大120Gbpsの帯域を持つThunderbolt 5ポートを搭載し、回路設計が複雑化したためコストが上昇しています。また、CUDIMM対応のメモリ回路の強化など、物理的な設計変更が価格に反映されています。
オーバークロック(OC)をせず、メモリ速度に拘らないのであればB860等の登場を待つのが賢明です。Z890はCore Ultra 9 285KなどのハイエンドCPUで極限まで性能を引き出すための設計であり、価格帯も6万円から15万円超までと幅広いためです。事務作業や軽いゲーム用途で、PCIe 5.0 NVMe SSDを1枚のみ利用する構成であれば、3〜4万円台で展開されるミドルレンジボードで十分な性能を得られます。
VRM(電圧レギュレータモジュール)の冷却性能に注意してください。MSI MPG Z890I EDGE WIFIのようなITXボードは省スペースながら強力な電源回路を搭載していますが、ケース内のエアフローが不十分だとVRM温度が90℃を超える場合があります。特に、TDPが高いモデルを運用して高負荷時に電力制限を解除する場合、小型のVRMファンを搭載したモデルや、スポットクーラーの導入を強く推奨します。
単純な数よりも、1フェーズあたりの許容電流(A)が重要です。Core Ultra 7クラスであれば16+1+1フェーズ程度で十分ですが、Core Ultra 9を常用し、PL1/PL2を上限まで解放して運用するなら20フェーズ以上の構成を持つモデル(例:Gigabyte Z890 AORUS MASTER)が理想的です。これにより、高負荷時でも電圧変動(Vdroop)を最小限に抑え、動作の安定性とコンポーネントの寿命を向上させられます。
不可能です。Z790はLGA1700ソケットを採用していますが、Z890は新規格のLGA1851ソケットへ変更されました。ピン配列および物理的な仕様が異なるため、互換性は一切ありません。CPUのアップグレードには必ずZ890(または今後登場するLGA1851対応ボード)へのマザーボード買い替えが必要です。また、メモリは引き続きDDR5が主流ですが、CUDIMM対応の有無で性能が変わる点にご注意ください。
CUDIMM(Clocked Unbuffered DIMM)は、メモリモジュール上にクロックドライバー(CKD)を搭載し、信号の整合性を高めた新規格です。これによりDDR5-8000MHz以上の超高速動作が安定して実現可能になりました。通常のDDR5メモリも使用可能ですが、8000MT/sを超えるような極限のオーバークロックを狙う場合は、Z890ボードとCUDIMM対応メモリの組み合わせが必須となります。
故障ではなく「メモリトレーニング」という正常な動作である可能性が高いです。Z890プラットフォームでは、特に高クロックメモリを搭載した際、BIOSが最適なタイミングを検証するため、初回起動やBIOS更新後に数分間の待機時間が発生します。マザーボード上の「Memory Training」LEDが点灯している間はそのまま待ち、もし10分以上経過しても起動しない場合は、メモリの挿し直しやCMOSクリアを試してください。
Gen5 SSDは最大14,500MB/s(Crucial T705等)という超高速転送を実現しますが、同時に発熱も激しく、対策なしではサーマルスロットリングが発生し速度が急落します。Z890ボードに標準装備されている大型のM.2ヒートシンクを必ず使用してください。特に、ヒートシンクが厚いモデルや、アクティブ冷却ファンを搭載したM.2スロットを持つモデルを選ぶことで、高負荷時でも安定した読み書き速度を維持できます。
最大のメリットは、外部ストレージやドッキングステーションにおける圧倒的な帯域幅です。Thunderbolt 5は最大120Gbps(帯域ブースト時)の転送速度を誇り、PCIe Gen4 x4相当の速度を外部端子で実現します。これにより、外付けのNVMe SSDから直接4K/8Kの未圧縮ビデオ編集を行うことが可能になります。また、複数の4K/120Hzモニターをケーブル1本で出力できる点も、クリエイターにとって大きな利点です。
LGA1851ソケットの導入直後であるため、将来性は非常に高いと言えます。Intelの傾向として、1つのソケットは通常2世代以上のCPUをサポートするため、次世代のCore Ultraの後継モデルが登場した際にも、[BIOSアップデートのみで対応できる可能性が高いです。特にPCIe 5.0やThunderbolt 5といった最新規格を網羅しているため、2028〜2029年頃まで現役で使い続けられる基盤になると予想されます。
今後のパーツ選定では、使用するメモリがCUDIMM対応か、また[Thunderbolt](/glossary/thunderbolt) 5ポートの数や[PCIe Gen 5スロットの配置が自身の利用環境に合致しているかを確認してください。特にメモリOCを重視する場合は、VRMフェーズ数だけでなく、メモリ配線設計に定評のあるハイエンドモデルを優先的に選定することを推奨します。

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